最新記事

米軍事

トランプ、先制核攻撃へ一歩──小型核弾頭開発を表明

2018年2月5日(月)17時46分
ザカリー・フライヤー・ビグス

2月2日、メリーランド州のアンドリュー空軍基地に到着したトランプ大統領 Leah Millis-REUTERS

<大型核兵器ばかり保有しているアメリカの核兵器は、犠牲が大き過ぎて使えないはず──そう高をくくっている敵にも抑止力を効かせるのが狙いというが>

ドナルド・トランプ米政権は2月2日、中期的な核戦略の指針となる核戦略見直し(NPR)を発表し、爆発力を抑えた小型核兵器の開発を打ち出した。アメリカが核兵器を本当に使うと敵国に思わせることで、抑止力を強化する狙いがある。

例えばロシアの核戦略は、攻撃してもアメリカとの全面核戦争に発展しないために、小型化した「戦術核兵器」の使用も想定している。アメリカが現在保有する核兵器は大型で大量の民間人が犠牲になるため、反撃はできないだろうという前提だ。

米国防総省高官は、アメリカが新たに開発する小型核は、ロシアや中国、北朝鮮などの敵国による小型核の使用を抑止し、核攻撃の応酬を回避するためのものだと言った。

「今後はさまざまな報復能力の確保と抑止力の維持を目指す。限定的な先制核攻撃なら、核兵器を使ってまでアメリカは報復してこないだろう、という誤った印象を敵国に与えないためだ」と、国防総省ナンバー3のジョン・ルード政策担当国防次官は2月2日、記者会見で言った。

「なぜ核攻撃をしないのか?」

小型核の開発と核戦力の多様化を掲げたことで、トランプが小型核を使った戦争を始める可能性が高まったと、一部の専門家は指摘する。実際トランプは外交アドバイザーに対し、アメリカはなぜ核兵器を使用しないのか、と聞いたと言われている。

「核戦力を増強すれば、それがどれほど綿密な計算に基づいていようと、核兵器使用の可能性が高まる、と主張する人が必ず出てくる」と、パトリック・シャナハン米国防副長官は言った。「実際はその真逆だ」

小型核を含めた核戦争の可能性を高めたいわけではない、とシャナハンは強調した。

「アメリカは核兵器の使用を望まない」

新たなNPRは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載用に爆発力を抑えた小型の核弾頭や、水上艦や潜水艦から発射できる核巡航ミサイルの開発に重点を置いている。巡航ミサイルは1991年の湾岸戦争がきっかけで信頼性を上げた。長距離でも命中精度が高かったからだ。

いずれの開発も、核弾頭を再利用することで、米軍が核兵器保有数をこれ以上増やさなくても多様な発射手段を確保できると、米国防総省の複数の高官は言った。

それでも専門家は批判的だ。

「より深刻なのは認識の問題だ。最大の欠陥はそこにある」と、核不拡散問題専門家でミドルベリー国際大学院モントレー校東アジア核不拡散プログラム部長を務めるジェフェリー・ルイスは本誌に語った。「小型核の開発は、アメリカは絶対に核兵器を使用できない、という解決不能な政治問題に対する小手先の解決策だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ダライ・ラマ、「輪廻転生」制度の存続表明 後継者選

ワールド

「真摯な協議続ける」と官房副長官、トランプ氏の関税

ビジネス

米デルモンテ・フーズ、米破産法の適用申請 売却プロ

ワールド

EU、米との通商協定で主要分野の関税即時免除を要望
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 8
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中