わが家のアレクサが勝手に広告を読み上げ始める日
おすすめ商品が「的確過ぎる」場合にも、ユーザーから敬遠される可能性がある。ネット大手の各社が常に私たちの行動を監視し、会話に耳をそば立てているという懸念は、ただでさえ高まっているからだ。
実際、アマゾンがアレクサのプラットフォーム上でダイレクトに広告を出すようになれば、同社はある意味、未知の領域に足を踏み入れることになる。
現状でも各社は自社アプリに広告を組み込んだり、自社のアプリ販売サイトで自社製品を宣伝したりしている。しかしスマートフォンのプラットフォーム(iOSやアンドロイド)に直接、広告を入れるようなことはしていない。この点はアップルのSiri(シリ)やグーグル・アシスタントでも同様だ。さらにアップルは独自のブラウザ「サファリ」の最新版で、ユーザーのプライバシー保護を強化する一環として広告目的のクッキー使用を制限する措置を打ち出してもいる。
しかしアレクサの場合、在来のプラットフォームと違って指を使わず視覚にも頼らず、音声で操作する。その使用体験はある意味、全くパラダイムの異なるものと言える。
ライバル各社はどうする
しかもアマゾンという会社は本質的に小売業だ。同社が提供するものは全て、消費者をアマゾンの生態系内に囲い込み、より多くの商品を購入する気にさせるようにできている。そうであれば、アレクサのプラットフォーム上に広告が紛れ込んでくるのも当然の成り行きだ。
果たして他社のAI音声アシスタントも、同様に広告を組み入れてくるだろうか。例えばグーグル・ホームやアップルが発売予定のホームポッドの場合は、むしろ「広告なし」をセールスポイントにしたほうがアマゾンとの差別化をしやすいかもしれない。
しかしAI機器の操作がますます音声志向を強めるなか、極めて優れた広告・検索プラットフォームを持つグーグルがアマゾンに追随し(あるいはアマゾンより先に)広告を入れてくる可能性は高いように思える。そうしなければ、いずれアマゾンが検索・広告分野におけるグーグルの覇権を脅かす存在となる恐れもあるからだ。
いずれにせよ、アレクサのようなAIアシスタントは私たち個人の好みや家庭での行動や習慣について、ますます多くのことを学びつつある。そうして学んだ知識の蓄積が有益な情報であることも、まず否定できない。たとえそれが、私たちをいつか広告漬けにする事態につながるとしても。
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© 2018, Slate
[2018年1月30日号掲載]