最新記事

貿易

トランプの「不当な」セーフガード発動に泣かされる韓国LG電子

2018年1月26日(金)16時30分
コラソン・ビクトリノ

2018年1月、ラスベガスの家電見本市で登壇したLGの朴日平CTO Steve Marcus- REUTERS

<米政権は、韓国企業と競争できない米家電大手ワールプールの訴えに動かされた>

韓国LGエレクトロニクスがアメリカの洗濯機工場の建設前倒しを決めた。当初は2019年前半に稼働開始予定だったが、計画を早めて2018年後半の稼働を目指す。

韓国の聯合ニュースによれば、LGが米テネシー州で進めている新工場の計画を前倒ししたのは、米政府が韓国メーカーを念頭に、洗濯機を対象にした緊急輸入制限(セーフガード)を発動し、韓国から輸出洗濯機に高い関税がかかることになったことに対応したもの。

同工場は敷地面積125万平方メートル、総工費2億5000万ドルの大型投資で、ドラム式と縦型洗濯機で年間100万台の生産能力を持つとみられる。新たに600人の雇用を創出すると、USニューズ&ワールドリポート誌は報じた。

米国際貿易委員会(ITC)が韓国製洗濯機の輸入急増で国内メーカーが被害を被っていると認定したのを受けて1月22日、ドナルド・トランプ米大統領が洗濯機に対するセーフガードを発動した。太陽光パネルは中国勢、洗濯機は韓国勢を狙い撃ちにしたものとみられている。韓国の家電大手サムスン電子のライバルでもあるLGは当初、トランプ政権の決定に失望感を表していた。

米政府への不満も表明

「誤った判断に基づく決定に深く失望している。セーフガードはITCの勧告を大きく逸脱している」と、LGは声明を発表した。米家電大手ワールプールへの不満もにじませた。「市場で勝ち目のない一部の企業が、通商法を利用して一発逆転を狙う典型例だ」

そもそもITCに輸入制限を勧告させたのは、ワールプールだ。同社は2017年、LGとサムスン製の洗濯機の不当廉売を訴え、輸入急増がアメリカの家電市場に深刻な被害を与えているとITCに請願書を提出した。輸入洗濯機には50%の関税をかけるべきだ、と具体的な数字も挙げた。

セーフガードの発動により、1年目は120万台までの輸入洗濯機に20%、それを超える分に50%の関税がかかる。3年目の税率は、それぞれ15%と40%になる。

米政府の決定を受けて、韓国産業通商資源部の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)通商交渉本部長(次官級)は、WTO(世界貿易機関)への提訴を誓った。「WTOの紛争処理で上級委員会の委員を務めた経験から、提訴すれば韓国が勝てるとみている」と、金は官民合同の対策会議で言った。

(翻訳:河原里香)

International Business Times

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ブラジル中銀、経済指標に基づいて政策金利を決定へ=

ワールド

欧州首脳、制裁によるロシアへの圧力強化で合意 独首

ワールド

ロ米EU英とのハイレベル会合を検討中、ウクライナ大

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の保護資格打ち切るトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国は?
  • 4
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 5
    【裏切りの結婚式前夜】ハワイにひとりで飛んだ花嫁.…
  • 6
    実は別種だった...ユカタンで見つかった「新種ワニ」…
  • 7
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 8
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 9
    日本人女性の「更年期症状」が軽いのはなぜか?...専…
  • 10
    飛行機内の客に「マナーを守れ!」と動画まで撮影し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 9
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 10
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中