最新記事

ソーラーカー

ソーラー電力だけで走行するエネルギー自給自足型の自動車がオランダで開発中

2018年1月17日(水)16時53分
松岡由希子

ソーラー電力だけで走行するエネルギー自給自足型の自動車「ライトイヤー・ワン」-lightyear

<「CES 2018」で、ソーラー電力だけで走行するスタートアップ企業「ライトイヤー」が、気候変動対策に注力する企業を表彰する「気候変動イノベーター」賞を受賞した>

コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)は、毎年1月、全米民生技術協会(CTA)が米ラスベガスで開催している国際家電見本市だ。大手メーカーを中心に新製品や最新技術などが披露されるほか、創業間もないスタートアップ企業を集めた専門エリア「ユーレカ・パーク」も近年、人気を集めてきた。

とりわけ、2018年1月の「CES 2018」では、温室効果ガスの排出削減など、気候変動対策に注力するスタートアップ企業を表彰するプログラム「気候変動イノベーター」が新設され、オランダ南部ヘルモントでソーラーカーの開発に取り組むスタートアップ企業「ライトイヤー」がこれに選出されている。

車両ルーフに太陽電池を搭載し、バッテリーに蓄電

「ライトイヤー」が現在開発中の「ライトイヤー・ワン」は、車両ルーフに太陽電池を搭載した4人乗りの電気自動車で、太陽光発電によって得た電力を使って走行する点が特徴だ。太陽光発電ができない夜間などでも走行できるよう自動車に搭載されたバッテリーによって電力が蓄積される仕組みとなっており、最長800キロメートル程度の走行が可能だという。


「ライトイヤー」を創業したのは、蘭アイントホーフェン工科大学(TU/e)を卒業した元学生チームの5名だ。在学中の2012年からソーラーカーの開発に取り組み、豪州3000キロメートルもの縦断に挑むソーラーカーレース「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」に二度出場した実績を持つ。

レースを通じた実証実験のもと、重量や快適性、デザイン性などにおいてさらなる改良を重ねながら「ライトイヤー・ワン」の開発がすすめられており、2019年には、税抜き価格11万9000ユーロ(約1600万円)で、販売を開始する見通しだ。

「ソーラー電力だけ」に、懐疑的な見方も根強い

トヨタ自動車が2017年、新型「プリウスPHV」にソーラー充電システムを実装するなど、太陽光から得たエネルギーを駆動用電力として利用しようという試みはすでにいくつかあるが、「ソーラー電力だけで自動車を走行させる」というコンセプトについては、懐疑的な見方も根強い。

その根拠として、米国のエンジニアのトム・ロンバード氏は、車両ルーフの太陽電池によって得られる最大馬力を実際に試算。太陽から地上に届くエネルギーが1平方メートルあたり800ワット程度で、車両ルーフの面積が合わせて6平方メートルと仮定すると、車両は4800ワットの電力が得られることになり、これを馬力に変換すると6.4馬力程度と算出される。日本の軽自動車の最高出力が64馬力であることをかんがみると、けして十分なものとはいえない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明

ワールド

ジョージア、デモ主催者を非難 「暴力で権力奪取画策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中