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「中国のエルサレム」浙江省・温州 当局の弾圧と闘うキリスト教徒

2018年1月4日(木)12時29分


信仰の爆発的拡大

過去40年に及ぶ経済的繁栄のなかで、中国のキリスト教徒は急速に増加した。公式データによれば信者数は現在約3000万人だが、外部の試算では約6000万人とされており、その大半がプロテスタントである。

温州では、19世紀の宣教師らが創設した小規模な信者コミュニティーが、今や100万人を超える規模に開花している。住民によれば、近年までは地元当局との関係は比較的穏やかだったという。

その後2014年になって、「違法」な教会を取り壊し、そこに飾られていた十字架を引きはがす政府キャンペーンが行われ、信者コミュニティーからの激しい抗議を引き起こし、彼らのあいだに当局への不信感の種がまかれた。

このキャンペーンは、かつて2002─2007年に浙江省の共産党トップだった習近平氏が党総書記に任命された直後に行われた。

だが、信者の急速な増加を抑えようという試みは、温州では難航している。多くは敬虔な地元企業のオーナーからの寄付で支えられている教会が至るところに存在するからだ。

温州にある教会の牧師は、「温州市政府は、数があまりにも多すぎることを理由に、教会を登録制にしていない。だから家庭教会も多く、政府がこれらを管理することは困難だ」と語る。

温州での取り締まりで特に問題になっているのが、日曜学校で用いられる教科書だと教師たちは言う。政府は宗教関係の出版物を制限しており、教会では海外の教科書を翻訳して用いることが多い。

ある教師は、未認可教科書の使用をやめ、「日曜学校」という名称を避けたところ、授業が再開されたと明かした。

信教の自由

中国の法律は、公式には子どもを含めたすべての人に信教の自由を認めている。だが同時に、教育と年少者の保護に関する規則では、国家による教育を妨害するため、あるいは子どもたちに信仰を「強要」するために宗教が用いられてはならないとされている。

最西端にある新疆地域など中国国内でも不安定な地域の地方政府は、子どもが宗教行事に参列することを禁じている。だがそれ以外の地域のキリスト教徒コミュニティーが全面的な制約に直面することはめったにない。

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