最新記事

自然

イルカの聴力さえ奪う魚のセックス大騒音

2017年12月21日(木)15時40分
キャサリン・ハイネット

アマゾン川で捕獲されたコルビナの一種  Paulo Santos-REUTERS

<イルカの聴力さえ奪う魚のセックス大騒音 繁殖のときコルビナのオスは、銃声のような音を出す。数百万匹が集まる大合唱は、海の生物で最大の音響ショーだ>

米カリフォルニアで、150万匹の魚が交尾する雷鳴のような音が録音された。コルビナという魚が繁殖相手を呼ぶ声で、水中の生き物が出す音としては最大の部類。イルカやアシカの耳をだめにしてしまうほどだという。

「カリフォルニア湾に春がくると、コルビナの成魚はすべて湾最北部のコロラド川デルタの一カ所に集まる。数百万匹からなる産卵集団を作るためだ」と、テキサス大学オースティン校の海洋科学研究所のブラッド・エリスマン准教授とカリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリップス海洋学研究所博士課程のティモシー・ロウウェルは、学術誌の生物学レターに書いた。

交尾するとき、コルビナのオスは銃声のような鋭い音波パルスを出す。それが数百万匹の合唱になると、釣り船からでも聞こえるような音量になる。エリスマンたちは最先端の録音装置で4日以上続いた魚たちの乱交パーティーの音を拾い続けた。

大音量が引き寄せる敵

「これまで録音された魚や海の生き物のなかで最大の音量だった。他の海洋生物の耳が聞こえなくなってしまうほどだ」と、2人は書いている。その音はあまりに大きく周辺の音量レベルが21倍にもなってしまうほどで、「まさに野生の音響ショーだ」という。

大きな騒音は、イルカやアシカの聴力を永遠に奪ってしまうほどだが、そんな危険にも関わらず、海の生物たちはコルビナの大群を食べようと集まってくる。音を聞きつけた人間の釣り船もやってくる。

webs171221-fish02.jpg 餌にありつけるか、聴力を失うか REUTERS/USFW

乱獲による数の減少がなければ、コルビナの合唱はもっとうるさかったかもしれないという。乱獲は、この最もユニークな海のショーを葬りつつあると2人の科学者は書く。そのうち、聞けなくなってしまうかもしれない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

PayPayの米上場、米政府閉鎖の影響で審査止まっ

ワールド

マクロスコープ:高市首相が教育・防衛国債に含み、専

ビジネス

日鉄、今期はUSスチール収益見込まず 下方修正で純

ビジネス

トヨタが通期業績を上方修正、販売など堅調 米関税の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中