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音声認識の仁義なき戦いが始まった

2017年12月20日(水)16時00分
ウィル・オリマス

どの音声認識ソフトを使うかで生活にも影響? Karneg/iStock.

<新分野の覇権を争うグーグルとアマゾン、そのなりふり構わぬバトルが消費者の自由を奪うことに>

パンチの応酬があったからって戦争が始まるものではない。さらなる応酬があり、エスカレートし、互いの憎悪が深まり、互いが腹をくくってこそ血みどろの戦争へと発展する。

12月の初めにグーグルは、アマゾンの「ファイアTV」と画面付き人工知能(AI)スピーカー「エコー・ショー」でYouTube(今はグーグルの傘下にある)の映像を見られなくする措置を表明した。

ネット空間の覇権を争う両社の小競り合いは今に始まった話ではない。しかし、これは壮大かつ不毛な戦いの序章かもしれない。その戦いでインターネットはますます使いづらくなり、消費者は置き去りにされ、おそらく勝者はいない。

プラットフォーム戦争は過去にもあった。最初はマイクロソフトが勝利した。職場のパソコンも家庭のパソコンもウィンドウズに占拠され、競合他社は排除された。その後にインターネットの時代が来てグーグルが台頭し、アップルが復活してスマートフォンの時代が来た。

これでマイクロソフトの勢いは衰え、モバイル機器のプラットフォームではアップルとグーグル、端末ではアップルとサムスンが張り合う構図になった。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の覇権争いもあったが、こちらはフェイスブックが勝利を収めた。

つまり、今現在の勝ち組はアップルとグーグル、フェイスブック、アマゾン、そしてマイクロソフトだ。今はうまくすみ分けができていて、アップルは携帯デバイス、グーグルはウェブ検索、フェイスブックはSNS、アマゾンはネット通販、マイクロソフトは企業向けソフトを制している。

しかし戦況は刻々と変化している。そしてついに、新たな戦線で火ぶたが切られた。もしかすると10年前のスマホ普及、その10年前の消費者向けネットビジネス台頭の時と同様、この戦いは業界の勢力図を一変させるかもしれない。

グーグルはまず今年9月に、アマゾンのエコー・ショーからYouTubeを利用規約違反を理由に遮断。するとアマゾンは、規約をクリアして再度アクセスできるようにした。しかしグーグルはそのアクセスも断ち、エコー・ショーよりずっとユーザーの多いファイアTVでもYouTubeを見られなくするという。こうなると、もう争いは止められない。

いったい悪いのはどちらなのか。アマゾンの声明によれば、グーグルは「開かれたウェブサイトへのアクセスを特定のユーザーに限って禁止するという残念な前例」を作っている。

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