最新記事

中東和平

パレスチナを裏切ったトランプの迷外交

2017年12月14日(木)15時30分
デービッド・ケナー

5月3日には、ワシントンで首脳会談が行われた。このときトランプは、中東和平を「やり遂げる」と宣言している。

そして、パレスチナ自治政府高官によれば、5月23日のベツレヘムでの会談でトランプはパレスチナ側に対し、交渉チームに話し合いへの準備をさせておくようにと述べた(パレスチナ側は態勢を整えて待っていたが、米政府から交渉に招かれることはなかった)。

9月にニューヨークで国連総会が開かれた際に会談したときも、トランプはアッバスに、「全身全霊を懸けてディールをまとめる」と請け合った。

パレスチナ自治政府側は、その後も交渉の地ならしが進んでいるものと思っていたという。実際、11月前半には、トランプ政権が中東和平の具体的な青写真作りを始めたと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

しかし、トランプがエルサレムをイスラエルの首都として認めると表明したことで、全て中断した。

トランプの深謀遠慮?

複数の米政権で中東和平交渉に携わった経験を持つアーロン・ミラー元中東大使によれば、ひょっとすると、トランプはイスラエルに恩を売ろうとしたのかもしれない。しかし、そのような戦略が功を奏するかは極めて疑わしいと言う。

「もしかすると(アメリカの外交官たちは)いま甘い姿勢で臨めば、後でネタニヤフ首相に厳しい姿勢で臨みやすくなると思っているのかもしれないが......そう思っているとすれば、後付けの希望的観測に思える」

イスラエル側の出方はともかく、パレスチナ側は、少なくとも差し当たりアメリカを再び仲介者として受け入れるとは考えにくい。

「和平への努力を全て台無しにするもの」と、アッバスはトランプの決定を批判した。「アメリカは、過去数十年続けてきた和平仲介者の役割から手を引くと宣言したに等しい」

トランプ政権がパレスチナ側の信頼を取り戻すのは、容易でなさそうだ。

From Foreign Policy Magazine

本誌2017年12月19日号[最新号]掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB指導部の継続性に問題なし、次期議長承認遅れで

ワールド

トランプ氏「今夜文明滅びる恐れ」、イラン交渉期限迫

ワールド

与党劣勢のハンガリー議会選、EUが「干渉」=米副大

ビジネス

イラン戦争でスタグフレーション懸念、FRB難しい舵
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中