最新記事

犬のうんちで方角が分かる? 犬は南北に体を向けて用を足す

2017年11月7日(火)17時00分
松丸さとみ

NUKUL2533-iStock

犬がうんち前にくるくる回るしぐさ

犬を散歩させていて、うんちをする様子を見せた時、くるくると忙しなく回ってなかなかポジションが決められなさそうな姿を見せる......というのは、飼い主にとっては見慣れた光景かもしれない。あの姿が実は、方角を探している姿だった、とはご存知だっただろうか。

地磁気(地球により生じる磁場)と動物の生態について研究しているチェコ生命科学大学とドイツのデュースブルク・エッセン大学の研究者からなるチームによると、牛やノロジカ、アカジカ、アカギツネなど複数の哺乳類には、磁場を感じる能力が備わっている。犬も帰巣本能が高いことからして、磁場を感じ取る能力があるだろうと考え、研究チームは犬の行動と磁場の関係についても研究を始めた。

犬のさまざまな行動(休んでいるとき、餌を食べているとき、用を足しているとき)を観察していたのだが、犬が「用を足す時」が、時間や場所にかかわりなく多くのデータを取れそうであり、またもっとも周辺環境の影響を受けないと思われたため、サンプルとして適切だろうと研究者らは考えた。そこで、犬がうんちとおしっこをするときのデータを集めることにしたという。

2年間で集めたデータは、実に犬種37種70匹のうんち1893回分とおしっこ5582回分。ここから分かったのは、地磁気の動きが静かな時、犬は南北の軸に体を沿わせて用を足すということだった。研究の結果は、オンライン科学誌「フロンティアーズ・イン・ズーオロジー」で発表されている。

オープンスペースでリードなしが条件

調査では、リードなどに繋がれていない犬が用を足す様子を観察した。場所は、牧草地や野原、森などのオープンスペースで、犬がそれに沿って用を足すことがないように、壁やフェンスなどがないようにした。また、自動車の往来や高圧電線、目立つ鉄筋の建築物もない場所で行なった。

すると、磁場の動きが静かな時ほど、犬は南北の軸に体を沿わせて用を足す傾向が強くなることが分かった。また、磁場の強さにかかわりなく、東西に体を向けて用を足すのは明らかに避けた様子だったという。

オスとメスとの違いについては、うんちの場合は違いが見られなかったが、おしっこの場合は、オスとメスで体を向ける方角に若干の違いがあったという。これは、オスは片足を上げるという性質からでどちらの足を上げるかによるのではないか、と仮説を立てているが、実際の理由については現在研究中とのことだ。

この調査で、犬が南北に体を向けるという事実ははっきりと分かったものの、論文によるとその理由は「いまだにナゾ」だ。犬が知覚的に磁場を感じ取り意図的にやっているのか、それとも「この向きの方がしっくりくる」などもっと無意識の部分で判断しているのかは不明らしい。

日本においては、犬を散歩させる時に壁や道路、目立った建築物がない場所、となるとなかなか難しいので、南北に向いているかを確認する楽しさを味わうのは難しいかもしれない。しかし万が一、愛犬と一緒に森で迷った時は、方角を知る手がかりとなるかもしれない......?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米PPI、1月前年比3.5%上昇 予想上回る

ワールド

米ロ首脳、再び電話協議の可能性 直接会談前に=ロシ

ワールド

ウクライナ抜きの和平合意「受け入れられず」、ゼレン

ワールド

独ミュンヘンで車突っ込み28人負傷、アフガン人運転
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景から削減議論まで、7つの疑問に回答
  • 3
    吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科された「定番の刑罰」とは?
  • 4
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 5
    夢を見るのが遅いと危険?...加齢と「レム睡眠」の関…
  • 6
    終結へ動き始めたウクライナ戦争、トランプの「仲介…
  • 7
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    駆逐艦から高出力レーザー兵器「ヘリオス」発射...ド…
  • 10
    便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明され…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 4
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 7
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 8
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 9
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から…
  • 10
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中