最新記事

中国共産党

新チャイナ・セブンはマジック――絶妙な距離感

2017年10月27日(金)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

●党内序列ナンバー5:王滬寧(おう・こねい)(62歳)

1955年10月、上海生まれ。復旦大学修士課程で国際政治を学び、終了後教授になり研究に没頭していたが、江沢民の大番頭、曽慶紅に見いだされ、江沢民のブレインに。政界入りへの野心が皆無で、ともかく頭を使うことと理論形成が大好きなため胡錦濤政権のブレインにもなっていた。

胡錦濤政権でチャイナ・ナインの一人として国家副主席になっていた習近平と話を交わしていたときに、王滬寧は習近平に対して「あなたは何もわかってない!適当なことをしゃべらないようにしてほしい!」と激しい言葉をぶつけた。烈火のごとく怒った習近平は「やめた!」と言って、チャイナ・ナインでいること、および国家副主席でいることを放り出そうとしたくらいだ。このことからも分かるように王滬寧は「オベンチャラ」が嫌いで出世欲がない。

その王滬寧が習近平の腹心などということはあり得ない。

ただ、中国共産党の論理と政策を練ることに長けているので、結局はすべての「紅い皇帝」に忠実だという結果にはなっている。今では外遊の時に王滬寧に隣で咄嗟のアドバイスを耳打ちしてもらわないと不安なほど習近平は王滬寧を頼り切っている。

その情報を把握しているトランプ大統領は、今年4月のアメリカにおける首脳会談で、王滬寧がいない隙を狙ってシリアにミサイルを撃ちこんだ話を唐突に習近平に告げ、世界の流れを変えてしまった(詳細は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』p.75のコラム「中国最強の知恵袋・王滬寧」。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』ではp.207~209)。

●党内序列ナンバー6:趙楽際(ちょう・らくさい)(60歳)

1957年3月、青海省生まれ。1980年に北京大学卒業後、青海省に戻り商業庁などを中心に同庁の共青団書記などを務め、2003年8月には青海省中国共産党委員会書記にまで上り詰める。清廉潔白。コネを使ったことがない。

胡錦濤が国家主席になったあと、共青団の中で若い人材を探していたとき、趙楽際を発掘。中央に起用したいと思ったが、なんと趙楽際の青海訛りがあまりに強すぎて言葉が聞き取れない。これでは中央で仕事をする際、支障をきたすだろうと懸念し、まずは訛りが近い陝西省の書記に任命し、その間に標準語に改めるよう要求した。胡錦濤から趙楽際の推薦を受けた習近平は、むしろ父親の陝西省訛りに近い趙楽際の訛りが気に入り、2012年の第18回党大会で中共中央政治局委員に抜擢した。趙楽際を発掘したのは胡錦濤で、趙楽際は誰にも媚びない中立である。このたび中共中央紀律検査委員会の書記に抜擢されたのは適材適所。しかし趙楽際を「習近平の腹心」と位置付けるのは適切ではない。趙楽際の訛りエピソードなどに関しては『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』p.203~205で触れた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や

ワールド

アングル:歴史的美術品の盗難防げ、「宝石の指紋」を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中