最新記事

中国共産党

新チャイナ・セブンはマジック――絶妙な距離感

2017年10月27日(金)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

●党内序列ナンバー7:韓正(かん・せい)(63歳)

1954年4月、浙江省生まれ。華東師範大学(上海市)を卒業してからずっと上海を出たことがなく、このたびの一中全会まで上海市にいて上海市書記を務めていた。江沢民の腹心。韓正が新チャイナ・セブン入りしたのは、習近平が党規約に「習近平思想」を明記することに対する江沢民と習近平の間のバーター取引であったとみなすのが妥当。

絶妙なバランス

このように、新チャイナ・セブンは、栗戦書を除いて、ただの一人も「習近平の腹心」と解釈できる者はいない。上述した派閥傾向の結果を習近平や李克強も含めて列挙するなら以下のようになる。

習近平

李克強:胡錦濤の流れをくむ生粋の共青団系列

栗戦書:習近平腹心(かつては共青団

汪洋:胡錦濤の流れをくむ生粋の共青団系列

王滬寧:完全中立(江沢民が発掘)。三代の紅い皇帝に仕えた中国最高のブレイン。

趙楽際:中立(共青団系列。胡錦濤が発掘)

韓正:江沢民の腹心(江沢民と習近平のバーター人事)

みごとではないか。

実に多彩な、あらゆる派閥の流れの要素を均等に配慮している布陣だ。

おまけに、次期最高指導者になりそうな人物が含まれていない。それでいながら、中国最高のブレイン・王滬寧をそばに置いている。

最も肝心なのは、共青団系列を数多く配置したことである。

これがマジックなのだ。

日本のメディアは「習近平のイエスマンを揃え」「習近平の腹心で固めた」「習近平一強を可能にした」などと、まるで呪文のように口を揃えた報道をしている傾向にあるが、なぜ筆者が「驚くべき解釈」と冒頭に書いたかが、お分かり頂けたものと思う。

マジックの種明かし

こうして、誰からも文句が付けられないほどの、あらゆるバランスを考慮し、しかもどちらかというと胡錦濤の流れをくむ共青団系列に重きを置きながら、キーパーソンである胡春華(54歳)を排除した。胡春華こそは共青団のホープで、ポスト習近平と早くから定められていた人物だ。

彼なら次期指導者として国家を運営する力量を持っている。しかも年齢的に次期最高指導者になる人物は彼以外にいない。

胡錦濤政権時代から、「胡錦濤を大胡(ダー・フー)」、「胡春華を小胡(シャオ・フー)」という愛称で呼び、すでにこの基本路線は決まっていた。その胡春華を外す代わりに、「共青団系列」を「見かけだけ」ちりばめたのである。

これがマジックの種だ。

中国共産党員は、小さい時は共産党員の少年少女版「少年先鋒隊」に入隊し、青年時代になると「共産主義青年団(共青団)」に入ってから中国共産党員になっていく。毛沢東による政治の嵐が終わり改革開放により正常化した後は、誰もがこのコースをたどっていくので、これからは「共青団派」という言葉さえなくなっていくほど、全ての党員が共青団員を経験するはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ルハンスク州全域を支配下に 

ワールド

タイ憲法裁、首相の職務停止命じる 失職巡る裁判中

ビジネス

仏ルノー、上期112億ドルの特損計上へ 日産株巡り

ワールド

マスク氏企業への補助金削減、DOGEが検討すべき=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中