最新記事

北朝鮮

金正恩、党大会終えた習近平に祝電 冷めた同盟は改善するか?

2017年10月26日(木)22時39分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

それによると、中国共産党大会の開催中の21日、共産党中央対外連絡部の副部長が記者会見で「中国と北朝鮮は近い隣国で、長年の友好と協力関係を維持している」と語ったことが報道されてから、中朝両国の関係が回復するのではないかと注目を集めた。

キム・ヨンヒョン東国大学北朝鮮学科教授は、「中国は北朝鮮と米国の間でメッセンジャーの役割をしながら、朝鮮半島情勢の流れを変えなければならない状況にある」「党大会以後、習近平も米朝間の対決構図を対話の方向に変えようとして悩んでいるようだ」と語った。

中国としては、国連の安保理の北朝鮮への制裁決議などで、勝手な動きは出来ないものの、北朝鮮との対話を通じて中朝関係の回復に乗りだし、ひいては米朝間の対決構図を緩和させることで、朝鮮半島における存在感を高めるようとしているという観測だ。

一方、ヤン・ムジン北朝鮮大学院大学教授は、「北朝鮮と中国、双方ともに北東アジアの平和のため、両国間の対話の必要性を共感しているだろう」と中朝関係が回復していくと分析した。

中国が共産党大会で習近平への権力集中を強めたことが、北朝鮮にとっては交渉しやすいという見方もある。対話の窓口が習近平に一本化されたことが、好材料だという意見だ。

だが、一部では最近の北朝鮮と中国の対立の溝が深いため、短期間での関係改善は難しいだろうという見方も出ている。

前回の共産党大会に送った祝電は?

韓国メディアの中央日報は、今回の金正恩の習近平への祝賀メッセージについて、習近平が党総書記に選任された前回2012年の党大会と比較、分析している。

それによれば、前回は文章として6段落810字の祝電を送っており、また内容としては長年続いてきた両国の親善関係を強調し、両国関係の発展を希望するメッセージを盛り込んでいた。しかし、今日公開されたメッセージは4段落340字と文字数は半分以下に減っており、しかも両国関係の親善に関連した内容もほとんどない。祝賀メッセージを送りはしたものの、依然としてわだかまりが残っている状態だ。

韓国政府の関係者は「習近平主席が今回の党大会で権力を大幅に強化し、しばらくは政権を掌握し続ける土台を作ったものと見られる。強力な権力を握るようになった習主席を考慮して、北朝鮮がその顔色をうかがうわざるを得ない状況になった。11月のトランプ米大統領の北東アジア歴訪が新たな影響要因になりかねないだけに、今回の北朝鮮の祝賀メッセージは両国関係の改善へ乗り出したというよりは、習近平を考慮した最低限の措置と見られる」と語ったという。

5年に1度の中国共産党大会で、党規約に自身の名前を盛り込み権力強化を果たした習近平に対し、祝賀メッセージを送った金正恩。果たしてこのまま関係改善へと舵を切るのか、あるいは11月のトランプ訪中時に新たな軍事挑発を行い、習近平の顔に泥をかぶせるのか? 北朝鮮情勢は当面緊迫した状況が続きそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協

ワールド

トランプ氏、民主6議員を「反逆者」と非難 軍に違法

ビジネス

米9月中古住宅販売、1.2%増の410万戸 住宅金

ワールド

中ロ、ミサイル防衛と「戦略安定」巡り協議 協力強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中