最新記事

法からのぞく日本社会

国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・前編)

2017年10月20日(金)17時23分
長嶺超輝(ライター)

作成:筆者

<総選挙が投開票される10月22日は、最高裁判所裁判官国民審査の日でもある。そもそもこの制度、問題だらけで形骸化しているが、それはなぜか。そして今回の審査対象となる「高校時代は野球部でピッチャー」の小池 裕氏とはどんな人物か>

10月22日は、衆議院議員総選挙の投開票日である。しかし、同じ日に行われるもう1つの投票がある。世間から「忘れられた一票」、最高裁判所裁判官国民審査だ。

総選挙があるたび、比例区の投票用紙と一緒にゴチャゴチャ書いてある紙を渡されて、「あっ、忘れてた」と思ったことのある人は少なくないだろう。

有権者が辞めさせるべきだと考える最高裁の裁判官に「×」を付け、辞めさせる必要はない裁判官には無印のまま投票する。そして、無印の票よりも×の票が上回った裁判官は、日本国憲法79条3項により罷免される。

しかし、過去23回行われてきた国民審査で、罷免された裁判官は1人もいない。それどころか、実は、最高裁判所に新しく入った裁判官を国民が審査する制度を整備している国は、世界を見回しても日本ぐらいしかない。

なぜ、国民審査のような制度があるのだろうか。それは日本国憲法79条に定められているからに外ならない。

過去23回で罷免ゼロの形骸化した制度だが...

1940年頃から、アメリカ合衆国ではミズーリ州でのみ、地元の裁判官を住民が定期的に信任審査する「ミズーリ・プラン(メリット・プラン)」が実施されていた。

このような、住民によって裁判官を直接的に審査する仕組みが、司法を人々からの支持や信頼感で支える制度として理想的だと考えたアメリカ人が、1945~46年、日本国憲法を策定するメンバーとして加わり、ミズーリ・プランをヒントにして草案の中へ「最高裁判所裁判官国民審査」を盛り込んだものと考えられている。

見方を変えれば、敗戦の遺産といえるかもしれない。

この国民審査は今回で24回目だが、×の数が過半数に達して罷免された例は、過去23回で1度もない。それどころか、×の割合の最高は15.17%(1972年、下田武三・元判事)にとどまる。

もはや形骸化している制度といわれても仕方がない。だが、国民からの信頼に支えられるべき司法において、その支持率を端的に示す仕組みとして、せっかく国民審査があるのだから、活かさない道はない。

ちなみに筆者は、国民審査に関する情報がインターネット上にほとんど存在しなかった2005年に、そうした情報をまとめたホームページを作成したことがきっかけで著書『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)を出版し、ライターとしてデビューした経緯がある。よって、個人的にも国民審査に人一倍の思い入れがある。

不透明な選定プロセス、新入りを1度きりの審査、分かりにくい投票用紙

本稿では、今回の国民審査で審査対象となる裁判官の情報を提供していくが、その前に問題提起をしておきたい。70年以上にわたってルールが変わっていないため、国民審査に関する問題点はいくつも蓄積している。

(1)裁判官に関する情報公開が不十分である。公式の「最高裁判所裁判官国民審査公報」も配布されるが、決して読みやすい書き方がなされていない。

ニュース速報

ワールド

カタールが対トルコ投資約束、リラ高後押し 米国は関

ビジネス

米国株式は下落、軟調な企業決算や貿易懸念で

ビジネス

ドルが一時1年1カ月ぶり高値、人民元は約1年半ぶり

ワールド

米政府、トルコの報復関税を批判 米国人牧師解放でも

MAGAZINE

特集:奇才モーリー・ロバートソンの国際情勢入門

2018-8・14号(8/ 7発売)

日本とアメリカ、世界の知られざる針路は── 異能のジャーナリストによるホンネの国際情勢解説

※次号は8/21(火)発売となります。

人気ランキング

  • 1

    亡くなった人の気配を感じたら......食べて、寝て、遊べばいい

  • 2

    死後世界も霊魂もないなら何をしてもいい──を実行した人がいた

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    「俺たちが独り身の理由」、米版2ちゃんで聞いた結果

  • 5

    死んだ人の遺骨も、ブッダと同じ「仏」と呼ばれるの…

  • 6

    性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

  • 7

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 8

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう…

  • 9

    中国大手32社が「不審死&経営難」海南航空と同じ運…

  • 10

    アンコール・ワットは、夏に行ってはいけない

  • 1

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

  • 2

    亡くなった人の気配を感じたら......食べて、寝て、遊べばいい

  • 3

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 4

    イルカとクジラのハイブリッドを確認、世界初

  • 5

    「乱交」で種の境界を乗り越えるサル

  • 6

    「いっそ戦争でも起きれば」北朝鮮国内で不気味な世…

  • 7

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 8

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 9

    サーモンを愛する「寿司男」から1.7mのサナダムシ発見

  • 10

    ランボルギーニなど高級車をペチャンコに! ドゥテ…

  • 1

    アマゾンのジャングルに1人暮らす文明と接触のない部族の映像を初公開

  • 2

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 5

    インドの性犯罪者が野放しになる訳

  • 6

    怒りの僧侶、高野山への外国人観光客にナナメ上の対…

  • 7

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 8

    イルカとクジラのハイブリッドを確認、世界初

  • 9

    実在した...アレクサに怒鳴る男 絶対にお断りした方…

  • 10

    異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲ま…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
メディアプロモーション局アルバイト募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

特別編集 ジュラシックパークシリーズ完全ガイド

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月
  • 2018年4月
  • 2018年3月