最新記事

旅行

トコジラミ(南京虫)が、ヒッチハイクでやってくる! 予防策はこれ

2017年10月11日(水)18時00分
松丸さとみ

dblight-iStock

「トコジラミはヒッチハイクで移動」

第2次世界大戦後、トコジラミ(南京虫)は先進国において、ほぼ駆除されたと考えられていたが、90年代以降、再び世界的に問題になっている。これは格安航空会社の普及などで海外旅行が盛んになったためと言われているが、では具体的に、トコジラミはどうやって長距離を移動しているのだろうか。

「ヒッチハイクで移動している」。英紙エクスプレスによると、そんな仮説を立てた学者が、これを確認しようと調査を行った。

飛べないトコジラミがどうして広範囲にわたり拡散するのか。そんなことを疑問に思い調査したのは、英シェフィールド大学の昆虫学者、ウィリアム・ヘントリー博士だ。結果は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。どうすればトコジラミを自宅に持ち帰らずに済むかの予防策も提案している。

汚れた衣類に集まったトコジラミは2倍

実験は、無人の部屋に、洗濯したてのきれいな衣類と汚れた衣類を、きれいなトートバッグにそれぞれ入れて行った。衣類はTシャツと靴下で、汚れたものはボランティアに12時から18時まで着用してもらったものだ。

これを2セットずつ用意し、2つの部屋にそれぞれ置いた。1つの部屋は、人間がいるのと同じ環境を作るため、二酸化炭素の量を増やした(蚊の場合は人間が吐き出す二酸化炭素に刺激されるため、トコジラミも同様だと考えられた)。そこにトコジラミを「隠れ場所」ごと置き、動きを記録した。果たしてトコジラミが「もともといた隠れ場所から離れるのか」、「汚れた衣類に集まるのか」、「二酸化炭素がトコジラミの動きに影響を与えるのか」の3点について観察した。

すると、「汚れた衣類を入れたトートバッグの方が、きれいな衣類が入ったトートバッグと比べ2倍のトコジラミが集まっていた」という。つまり、トコジラミは汚れた衣類に付着している人間の臭いに吸い寄せられているのだ。二酸化炭素の量による違いは、衣類の入ったトートバッグ内のトコジラミの数においては見られなかった。ただし、二酸化炭素が多い部屋は、より多くのトコジラミがもともといた隠れ場所から移動して広がっており、宿主を探し求める行動を二酸化炭素が促したと考えられるという。

ヘントリー博士によると、トコジラミは人間の皮膚から出る瞬発性物質のうち104種類を感知することができる。人間が着た衣類からこのような物質が気化することで、トコジラミが引き寄せられているのだ。つまり、着用済みの衣類をスーツケースの中に入れて開け放しのまま放置したり床に置いたりすることで、トコジラミがスーツケースに移り、「ヒッチハイク」させてしまうという。

ヘントリー博士は、旅先で着た衣類をいかに管理するかが、トコジラミを連れ帰らないためのポイントになる、と述べている。

ヒッチハイク防止策は

前述のエクスプレスによると、旅先で着た服は、最終日に洗濯するのが得策だとしている。多くのホテルでは衣類を洗濯するサービスを提供しており、通常は業務用の洗濯機を使うため衣類は高温で洗濯される。さらに、高温の回転式乾燥機も使うだろう。トコジラミはこうした熱で死滅すると考えられる。

また、スーツケースをベッドの上に置くのは避け、木製や金属製のスーツケース・ラックを使うとより効果的だという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中