最新記事
健康

家事は命を救う? 1日30分で死亡率低下

2017年10月20日(金)18時00分
松丸さとみ

PeopleImages-iStock

30分の運動で死亡リスクが3割弱低下

1日30分の運動をすれば、早期に死亡するリスクを大幅に減らせることが、17カ国13万人を対象にして行った大規模な調査で明らかになった。しかもその30分は、ジムに行ったりランニングしたりなどの本格的な「運動」である必要はなく、通勤や家事で体を動かすのでも十分だという。

調査は、カナダのマクマスター大学の公衆衛生研究所と、カナダのオンタリオ州にある複数の病院から成る医療グループ、ハミルトン・ヘルス・サイエンスが行っている、PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)研究という疫学研究の一環。結果は、医学雑誌「ランセット」に発表された。

調査結果によると、1日30分または週150分のエクササイズをした場合、死亡のリスク(死因の特定なし)が28%、心臓病のリスクは20%、それぞれ低減することが分かった。さらに、運動による健康への効果は、運動時間を長くすれば長くするほど得られるといい、キビキビしたウォーキングを週750分(12時間半)行った場合、死亡リスクが36%低減した。

マクマスター大学はプレスリリースで、この調査チームの研究責任者であり心臓病の専門医でもあるスコット・レア医師の談話として、「ジムに行くのは素晴らしいことだけど、ジムで過ごせる時間は限られている。徒歩で通勤したり、昼休みにウォーキングしたりすれば、それも運動の足しになる」との談話を紹介している。同医師によると、運動の恩恵を得るには、運動を日課に組み込む必要があるという。

ウォーキングや家事は無料でできる健康法

世界保健機関(WHO)は、健康的な成人(18〜64歳)の運動量として、強度が中程度の有酸素運動を週150分か、強強度の有酸素運動を週75分行うことを推奨している。さらに、筋力トレーニングも週2回以上行うよう推奨している。

マクマスター大学は、身体的な活動が心臓病や死亡のリスクを減らすとしたこれまでの他の調査は高所得国を対象としており、所得が低い国では余暇時間にエクササイズなどを行えない、と説明。「今回の調査は、中から低所得の国を含めることで、通勤や肉体労働、家事などから得られる恩恵を見極めることができた」とレア医師は述べている。

さらに世界保健機関(WHO)によるとレア医師は、世界中の貧しい人たちにとって、心臓病を予防するために薬を飲んだり果物や野菜を多く摂ったりなどは金銭的に難しいと指摘。ウォーキングは無料でできる上に、健康面での利益も大きいと話している。

ロイター通信の同記事によると、2016年に心臓病で亡くなった人は世界で948万人に達しており、世界最大の死因となっている。また、治療が患者の経済的負担になっているとも指摘している。

公衆衛生研究所の所長でありPURE研究全体の責任者でもあるサリム・ユースフ博士は、「みんなが週150分以上活動的に動けば、7年間で、全死亡件数のうち計8%を予防できる」と述べている。

ニューズウィーク日本版 中国EVと未来戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月14日号(10月7日発売)は「中国EVと未来戦争」特集。バッテリーやセンサーなどEV技術で今や世界をリードする中国が戦争でもアメリカに勝つ日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

主要行の決算に注目、政府閉鎖でデータ不足の中=今週

ワールド

中国、レアアース規制報復巡り米を「偽善的」と非難 

ワールド

カタール政府職員が自動車事故で死亡、エジプトで=大

ワールド

米高裁、シカゴでの州兵配備認めず 地裁の一時差し止
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリカを「一人負け」の道に導く...中国は大笑い
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 10
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中