最新記事

女性問題

中国にもある厚い「ガラスの天井」 党中央政治局は女性1人

2017年10月29日(日)21時00分

共産党は、一部のグループについては、代表者がいるように体裁を整えることを重視している。

党大会や年1回の全国人民代表大会には、56の中国少数民族や、全支部の軍や警察、民間企業、国営企業、そしてもちろん政府の代表者が集められる。

今回の党大会には、宇宙飛行士やスポーツ選手、俳優、裁判官、農家などの代表者が参加した。エプロンとメイド帽姿で出席した家政婦の代表者さえいた。

人民の党

一般的に中国では女性の政治参加が遅れている。

世界経済フォーラムの2016年男女格差報告では、女性の政治参加において、中国は144カ国中74位だった。2006年には、115カ国中52位だった。

ニューヨーク在住の社会学者で、中国女性の地位問題についての著書もあるリタ・ホン・フィンチャー氏は、伝統的な男女観が復活する中国では、女性の地位が後退していると指摘。

「共産党は根本的に、上級レベルへの女性登用にまったく無関心な印象がある」と、フィンチャー氏は言う。

中国で改革開放政策が取られる以前、毛沢東時代の計画経済では、女性は労働力に組み入れられ、国づくりの一翼を担った。

1949年に共産党政権が誕生して以降、最も権力があった女性は、毛氏の妻の江青氏だ。1976年に毛氏が死ぬと、江青氏はともに権勢を振るった党中央政治局の「4人組」と一緒に逮捕され、文化大革命の行き過ぎた混乱の責任を問われた。

最近では、高齢化と労働力人口や出生率の減少などの人口問題を脅威に感じた共産党は、女性は結婚して子供を産むべきとの考えをさかんに宣伝している、とフィンチャー氏は語る。

もちろん、中国のビジネス界には著名な女性経営者もいる。不動産開発大手のSOHO中国<0410.HK>の張欣氏や、スマートフォン向けレンズ大手の藍思科技(レンズ・テクノロジー)<399433.SZ>を創立し富豪となった周群飛氏などだ。

また党や政府も、男女平等の建前を賞賛している。憲法は、男女同権を保証している。

「政府は、男女平等の問題を真剣にとらえているように見せたがっているが、現実はそうではない。男女同権から完全に撤退しているのが実情だ」と、フィンチャー氏は言う。

党大会に出席する代表者の選挙過程は厳しい管理下にあり、候補者は党や指導部への忠誠を前もって試される。

だが、代表者の1人で深海研究用の潜水艇乗組員Tang Jialing氏は、女性がいないのは民意の反映ではないかと話す。

「われわれは、人民の党だ。男性より女性を多く選出したのも人民だ。人民の選択だ」と、彼は言った。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

John Ruwitch

[北京 25日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中