最新記事

女性問題

中国にもある厚い「ガラスの天井」 党中央政治局は女性1人

2017年10月29日(日)21時00分

10月25日、中国で政治エリートへの起用が恒常的に進まないグループが1つある。それは女性だ。写真はいる孫春蘭・党中央政治局委員。2016年11月撮影(2017年 ロイター/Jason Lee)

中国共産党が、北京で24日閉幕した党大会のような大規模集会を開く際には、「人民の代表」という自らのイメージを演出する狙いもあって、出席する代表者リストは常に注意深く選定される。

下働き的な立場の人や、少数民族に光があてられることもあるが、政治エリートへの起用が恒常的に進まないグループが1つある。それは女性だ。

中国建国の父である毛沢東氏は、かつて女性が「天の半分を支える」と語ったかもしれない。だが5年に1度の党大会で新指導部が選ばれてみると、女性が支える部分はほとんど何もなかった。

党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会には男性7人が選ばれたが、女性は誰ひとり選ばれなかった。これまで女性が起用された例は過去1度もない。

中央政治局の新たな委員25人のうち、女性は外部との連携を担当する部門を率いる孫春蘭氏のみだ。孫氏は2期目の選出となり、5年後に引退するとみられている。これまで中央政治局には孫氏のほかに劉延東副首相がいて女性2人の体制だったが、定年を迎えた劉氏は、今回同局から退任した。

その下に位置する任期5年の党中央委員会では、新たな委員204人のうち女性は10人、割合にして4.9%に過ぎない。これまでと同じ割合だが、女性が13人いた2007年─2012年期からは減少している。

党幹部になぜ女性がこれほど少ないのか、党の広報部門も兼ねる中国国務院情報部にファクスで質問したが、回答はなかった。

参考までに、トランプ米政権の閣僚24人のうち女性は5人で、米連邦議会の女性議員の割合は約20%。日本の閣僚20人のうち女性は2人で、22日の総選挙で選出された衆議院議員の10%程度が女性だった。

宇宙飛行士と家政婦

共産党大会の出席者全体では、女性の割合はもっと高い。代表者2287人の約4分の1だ。この割合は、約9000万人いる党員全体においてもほぼ同じだ。

だが、指導部ポストがほぼ男性に握られている現状では、党大会に出席した女性代表のほとんどは「お飾り」に過ぎないと、フェミニストのソーシャルメディアサイトを展開するNGO管理者のXiong Jing氏は語る。

「これは手垢のついた問題だ。今のような政治システムでは、党大会代表や政府内でもっと多くの女性が参加したとしても、できることは限られるかもしれない」と、Xiong氏は指摘する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ラファ攻撃は「人道上の悪夢」、停戦合意に尽力を=国

ワールド

米英豪、ロックビットのロシア人幹部に制裁 ランサム

ビジネス

米金融政策、想定ほど引き締まっていない可能性=ミネ

ビジネス

米当局、テスラに詳細要求 「オートパイロット」リコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中