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外国人が心底失望する「日本のホテル事情」

Five Star Allianceという有名な「5つ星ホテル」の情報サイトがあります。そのデータによると、世界139カ国に3236軒の「5つ星ホテル」があります。では日本はどうかというと、日本国内でこのサイトに登録されている「5つ星ホテル」はわずか28軒しかありません。これは、ベトナムの26軒を少し上回る程度です。

「ひとつの国にある超高級ホテルの数なんてそんなものじゃないの」と思うかもしれませんが、実は外国人観光客が年間2900万人訪れているタイには110軒の「5つ星ホテル」があります。バリ島だけでも42軒です。年間3200万人訪れているメキシコにも93軒の5つ星ホテルがあるのです。

タイはすばらしい実績を上げています。2900万人の観光客しか来ておらず、物価水準も先進国の半分以下であるにもかかわらず、タイの観光収入をドル換算すると、世界第6位の観光収入を稼いでいる計算になります。

タイが観光でこれほど稼げる理由のひとつに、110軒の5つ星ホテルの存在があります。タイの実績は「特殊な娯楽」を求める人に支えられているという批判をたまに聞きますが、それは事実無根のただの偏見にすぎません。

年間2400万人の観光客が訪れ、G7の一角をなす「経済大国」であるはずの日本に、タイの4分の1、メキシコの3割しか「5つ星ホテル」が存在しない。これは明らかに、日本が国際観光ビジネスを重視してこなかった結果だと思います。

実際、2年前にこんなことがありました。あるアメリカの大富豪の事務所から、紅葉の時期に京都に泊まりたいが、安いホテルしか見つからず、「予算の最低基準」を下回る。いいホテルを探してくれないか、という連絡があったのです。

私も手を尽くしたのですが、結局アパホテルしか空いておらず、その大富豪の訪日自体が白紙になりました。

もちろん、アパホテルが悪いと言いたいわけではありません。しかし世界のお金持ちには「予算の最低基準」があり、それを下回ると訪日すらあきらめる人が多いのです。これは究極の「もったいない」ではないでしょうか。

今まで日本は観光産業に力を入れてきませんでしたので、ある意味、仕方ないともいえますが、今後「観光大国」になることを考えると、高級ホテルを整備して単価を上げることが必要なのです。

そんなものがなくても、日本にはすばらしい文化や「おもてなし」の心があるので、観光客の満足度には影響がないと主張される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながらそれは精神論をふりかざしているだけにすぎず、「観光大国」を目指すうえでの合理的な解決策とはいえません。

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