最新記事

中国

嘘だらけの劉暁波の病状に関する中共プロパガンダ

2017年7月4日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ノーベル平和賞受賞者の劉暁波の即時釈放を求めるデモ(香港、6月27日) Bobby Yip-REUTERS

あたかも劉暁波氏が手厚い治療を受けているような動画が流れている。これは中共が仕組んだプロパガンダであると、中国内外にいる劉暁波関係の人権派弁護士や関係者らが断言した。筆者に来るメールから真相を追う。

脳細胞を破壊される危険性もあった

ノーベル平和賞受賞者で獄中にいた劉暁波氏が中国社会に対する発信力を維持することを恐れた中国政府は、投獄した当初、劉暁波氏を「外見的には健康そうで、脳細胞だけを破壊する処置」を何度も試みようとしたという。その方法を見抜いていた家族や人権派弁護士などの関係者が何とかそれだけは防ぐことに成功した。

しかし癌にかかっている彼の体を治療することを拒否し、また彼が海外で治療を受けたいと望んでいたことも受け付けなかった。彼の妻の劉霞さんは軟禁され、極度のストレスで重症の抑うつ症にもなっていた。そのため二人は北京や海外で高度の治療を受けることを望んでいたが、それは拒否された。

中国当局が望んでいたのは、劉暁波の精神が死には至らない状態で精神活動能力を失い、言論活動が不可能になることだった。ちょうど北朝鮮に収容されていたアメリカ人学生オットー・ワームビアさんが解放はされたが、脳細胞が活動不能となっていて亡くなった状態と似ている。北朝鮮と中国のやりそうなことだ。劉暁波氏の場合、それは失敗に終わった。

肝臓が破裂して大出血

しかしじわじわと肝臓がんが悪化するのを待ち、同様に言論活動をして中国の民主化に影響を与えることができないまでに徐々に弱らせようとしたのだが、劉暁波氏の病状は悪化し、肝臓が破裂して大出血を起こしたのだという。そのときには末期癌になっていて全身に転移し獄死が懸念された。そうなると言論の自由を求める中国内外の民が民主を求めて一斉に立ち上がる可能性がある。習近平の香港訪問に影響するとまずいと判断した当局は、劉暁波氏を瀋陽にある中国医科大学付属病院に獄外入院させた。

ネットに流した治療に集中しているプロパガンダ映像

そのことがネットを通して知られるようになると、奇妙なユーチューブ動画が流れ始めた。

劉暁波氏が牢獄で非常に良心的で手厚い扱いを受け、そのことに非常に満足しているということを撮影した映像だ。これが何を意味するのか、人権派弁護士など関係者に分析をお願いした。その結果、以下のようなことが分かった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

ウクライナ「和平望むならドンバス撤収必要」=ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中