最新記事

北朝鮮問題をめぐって、G20米中露日韓の温度差

2017年7月10日(月)00時08分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

独ハンブルクで開催されたG20首脳会議 Carlos Barria-REUTERS

習近平を褒め殺していたトランプが「中国の努力」に疑念を持ち始め、習近平はプーチンと足並みを揃えている。日米韓首脳会談はあっても、文在寅は北との対話を放棄していない。G20における各国の思惑を考察する。

中露は「双暫停」を要求

中国の習近平国家主席はドイツ、ハンブルグでのG20首脳会議に参加する前に、7月4日、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談を行なった。会談後、共同声明を出し、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことについては国連安全保障理事会の決議に違反するものであり受け入れられないと非難しながらも、中国が主張してきた「双暫停(そうざんてい)」を実行することを米朝に要求した。

「双暫停」とは「北朝鮮は核・ミサイル開発を暫定的に停止(凍結)し、米韓は合同軍事演習を暫定的に停止して、対話のテーブルに着く」というものである。「米朝双方が暫定的に軍事行動を停止する」という意味から来ている言葉だ。

この「双暫停」案は、4月6日と7日にアメリカで米中首脳会談が開催される前に中国側が提案していたもので、首脳会談後の「米中蜜月」期間においては前面には出していなかった。その期間は、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版である「環球時報」が5月4日に「中朝友好互助条約――中国は堅持していくべきなか?」という社説を載せたことからも分かるように、かなりアメリカに歩み寄った形を取っていた。

中朝友好互助条約は第二項に「参戦条項」があることから、「中朝軍事条約」と呼ぶことが多い。つまり「いざとなったら、中朝軍事同盟を破棄してもいいんだぞ」という逼迫したところまで来ていたのである。

そこに変化が起き始めたのは、5月14日の朝、北朝鮮がミサイルを発射したからだ。

習近平にとっても最高の晴れの舞台となる、初めての一帯一路国際協力フォーラムサミットが北京で開催される初日を選んで、習近平の顔に思い切り泥を塗った。その詳細は5月14日付の本コラム「習近平の顔に泥!――北朝鮮ミサイル、どの国への挑戦なのか?」で詳述したので、ここではくり返さないが、もっと大きな分岐点は米韓首脳会談だった。

米韓首脳会談で文在寅大統領は米国に屈服

6月30日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領はワシントンでトランプ大統領と会談を行なった。その前日の29日午後、米財務省は突然、中国の遼寧省にある丹東銀行を「マネーロンダリングの疑いがある」としてアメリカとの取引を禁じるという制裁に出た。丹東銀行など小さな地方銀行なので、中国自身にとっては大きな影響はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2

ビジネス

さらなる利下げは金融安定リスクを招く=米クリーブラ

ビジネス

米新規失業保険申請、8000件減の22万件 継続受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中