最新記事

EU

仏独が新型戦闘機の共同開発 英EU離脱で欧州軍事産業は転換点へ

2017年7月14日(金)14時05分

 7月13日、フランスとドイツは両国閣僚会議後、新型戦闘機を共同開発する方針を発表した。写真は13日、仏エリゼ宮(大統領官邸)で行われた両国閣僚会議後の共同記者会見に臨むドイツのメルケル首相(左)とフランスのマクロン大統領(2017年 ロイター/Stephane Mahe)

フランスとドイツは13日の両国閣僚会議後、新型戦闘機を共同開発する方針を発表した。英国の欧州連合(EU)離脱を見据えて、安全保障面での協力を強化する狙いがある。

これにより、ドイツと英国などの共同開発機「ユーロファイター」、仏「ラファール」、スウェーデン「グリペン」と現在3種類が存在する欧州の戦闘機地図には今後変化の波が押し寄せそうだ。

仏独両国の発表によると、新型戦闘機開発の行程表を来年半ばまでに策定する方針。マクロン仏大統領はメルケル独首相とともに臨んだ会見で「これはとてつもない革命であることは認める。だが波乱なく計画的に時間をかけて実行されるという点で心配はしていない」と語った。

専門家は、共同開発対象は有人機と無人機兼用の戦闘機になる可能性もあると予想した。

フランスは1980年代にユーロファイター開発計画から離脱。独自に同国のダッソー・アビアシオンを通じてラファールを配備し、両機は世界中でし烈な販売競争を繰り広げてきたが、そうした状況には終止符が打たれる。

防衛業界専門家は、今回の動きは英国と同国の主な防衛機器契約を担うBAEシステムズにとっては逆風だとの見方を示した。

あるドイツの防衛業界幹部はロイターに「英国にとっては次のようなメッセージになる。つまり『あなたはEUを出ていき、われわれ(仏独)は先に進む。防衛面でEUの足を引っ張るあなたにはもう興味はない』ということだ」と説明した。

実際、仏独の共同開発宣言において英国がどのような役割を果たすかは明らかにされなかった。一部の専門家や防衛産業関係者は、今後英国が米国との防衛協力をさらに進めていくきっかけになるかもしれないと述べた。

英国は現在、ユーロファイター開発に参加する一方で米ロッキード・マーティンが主導する新型ステルス戦闘機「F35」計画の陣営にも属している。英シンクタンク研究員は「英国が次世代戦闘機において米国との新たな提携を検討することはほぼ避けられない」と話した。

[パリ 13日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指

ビジネス

NY外為市場=ドル一時153円台に急落、介入観測が

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨

ワールド

イスラエル軍、ガザ攻撃「力強く継続」 北部で準備=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中