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東南アジアのISIS対策 「無法地帯」の海上制圧が鍵

2017年6月16日(金)09時00分


空路と海路

これら3カ国は来週、シンガポールの支援を得て、フィリピン南西にあるスールー海の上空で、哨戒機とドローン(無人航空機)を使った共同哨戒を開始するとともに、海上での共同パトロールも強化する。

昨年、ISへの支援を表明している古参の武装組織アブ・サヤフによる誘拐事件が多発したことを受けて、3カ国の海軍は共同パトロールを計画した。だが、克服すべき課題はたくさんある。

「われわれは、現時点で、無線によるコミュニケーションが取れない。パトロールは自国領海に限定され、人員交流についても協議していない」。そう不満を口にするのは、インドネシア北カリマンタン州タラカン海軍基地を指揮するフェリアル・ファクローニ海軍第一大将だ。

同大将はロイターに対し、共同作戦は今月にも開始されるだろうと語った。タラカンはボルネオ島の北東岸に位置し、インドネシア海軍の基地としては、誘拐が頻発するセレベス海、スールー海に最も近い。

だが、島々をつなぐ航路を行き交う数百隻の商船、漁船、フェリーを把握し、いつ、どの船舶を停止させて捜索を行うべきか判断することは、たとえ3カ国の海軍が協力したとしても困難な問題だ。

この海域の群島には深い森に覆われた湾や入江があり、厳格化した監視から逃れたい高速船にとって格好の隠れ場所となっている。

「スールー海ではこれまでも常に、観光客の誘拐などの事件が散発的に起きていた。しかし、昨年から今年にかけて、その数は本当に増えている」と、クアラルンプールの国際海事局でアジア支部長を務めるノエル・チャン氏は語る。

「まずタグボートが狙われ、次いで商船が襲われた。現在では外洋航路の大型船が標的になっている。攻撃が局地的だった数年前とは様変わりだ」と言う。

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