最新記事

米大統領

トランプもうひとつの危機「憲法違反訴訟」が3件も係争中

2017年6月16日(金)20時21分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Eric Thayer-REUTERS

<白熱する「ロシア疑惑」の陰で、トランプ大統領を訴えた訴訟が3件。収まる気配のない「利益相反」問題を整理してみると>

ドナルド・トランプ米大統領が「ロシア疑惑」で追い詰められつつある。

トランプに解雇されたジェームズ・コミー前FBI長官に続き、今度はジェフ・セッションズ司法長官が上院情報委員会の公聴会で証言した。

セッションズは自らがロシア政府と結託していたという疑惑を強く否定したが、一方で、ロバート・ムラー特別検察官がトランプを司法妨害の疑いで捜査しているという報道が出て、事態はさらに深刻化している。

【参考記事】コミー前FBI長官が反トランプの議会証言 何がわかったのか

その陰で現在、実は3件の訴訟が係争中だ。いずれもトランプに対して、合衆国憲法に違反していると訴えている。

大統領が憲法違反? それも3件である。一体どういうことなのか。何が問題になっているのか。そして、トランプが裁判に負ける可能性はあるのか。

この、トランプのもうひとつの危機について、最近の訴訟から順に整理する。

(1)約200人の民主党議員が提訴

6月14日、190人を超える民主党議員がトランプを提訴した。上院議員30人と下院議員166人。原告によると、大統領を提訴した議員の数としてはアメリカ史上最多だという。

合衆国憲法の「報酬条項」は、公職にある者が議会の承認なしに外国の政府や王族から報酬や贈与を受け取ることを禁じている。トランプは自らの事業により外国政府から利益を得ることについて議会承認を求めておらず、それが憲法違反に当たるというのが彼らの主張だ。

大統領就任にあたって、トランプは不動産会社トランプ・オーガニゼーションの経営権を2人の息子に譲っている。しかし、今も関係を断ち切っておらず事業について報告を受け、利益も得ていると散々批判を浴びてきた。

実際、首都ワシントンのトランプ・インターナショナル・ホテル(ロイターによれば、トランプ本人が所有)には外国政府の訪問団が数多く滞在。トランプ・オーガニゼーションについては、外国政府を代表する顧客から得た利益は米財務省に寄付すると以前に表明しているが、利益相反問題は解決されないまま現在に至っている。

(2)メリーランド州と首都ワシントンが提訴

その2日前、6月12日にはメリーランド州と首都ワシントンの司法長官(すなわち州政府だ)が合同で、トランプを提訴した。こちらも同様に、トランプが外国政府から報酬を得ていることが憲法違反だと訴えている。

スレート誌によれば、(1)の提訴が「議会承認」にポイントを絞っているのに対し、こちらは実質的な被害を訴えている点が特徴的。ワシントンのトランプのホテルを外国政府団などが利用することで、両自治体(メリーランド州はワシントンに隣接)の他の企業や自治体運営のビジネスセンターがビジネスの機会を奪われているという主張だ。

また、トランプ・オーガニゼーションを特別待遇するよう圧力がかかっていることも問題視。多くの事業の経営権をトランプが今も握っており、合衆国憲法の報酬条項に違反していると訴えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中