最新記事

香港

年内完成が迫る中国と香港結ぶ橋 強まる本土支配の象徴か

2017年5月22日(月)16時42分

5月19日、香港と中国本土の珠江デルタを結ぶ、長さ約30キロの橋が完成に近づくなか、中国の当局者らは、香港との緊張が高まっているこの時期に、この橋が経済統合以上のものをもたらすことを期待している。写真左は建設プロジェクト責任者の1人である中国当局のWei Dongqing氏。珠海市で17日撮影(2017年 ロイター/James Pomfret)

香港と中国本土の珠江デルタを結ぶ、長さ約30キロの橋が完成に近づくなか、中国の当局者らは、香港との緊張が高まっているこの時期に、この橋が経済統合以上のものをもたらすことを期待している。

仏パリのエッフェル塔60基分以上の鋼鉄を使って建設されているこの海上橋「港珠澳大橋」が最初に提案されたのは1980年代のことだった。英国領だった当時の香港自治政府は、共産主義国である中国との距離が一段と近くなることを恐れ、橋の建設に反対した。

しかし、1997年に香港が中国に返還されると、香港と、珠江デルタにおける製造業とスプロール現象を融合させる数々のプロジェクトが飛び交い、香港に少なからず不安を与えている。

橋建設プロジェクトの責任者の1人である中国当局者Wei Dongqing氏は、欧州の元植民地である香港、マカオと、広東省珠海市をつなぐこの橋について、物理的にも心理的にも調和を促進するものとの見方を示した。

「橋は3つの場所をつなぎ、心理的影響をもたらす」と、完成半ばの6車線の橋の上を行く記者向けのツアーバスのなかで、Wei氏はロイターに語った。遠くにはマカオのカジノがかすかに見える。

「われわれは未来に自信がある。夢は統合された市場、統合された国民だ」

建設開始から8年近くが経過し、最後の試算によると、橋と海底トンネルを含むプロジェクトの総建設費は約190億ドル(約2.1兆円)にまで膨れ上がった。

橋は無用の長物との批判の声も上がっている。完成しても、発展は困難とみられており、交通量も1日あたり約4万台との予想には達しないと見込まれている。

年内には大半の工事が完了し通行可能になるとみられるが、料金所や税関・出入国管理施設を完備したフル稼働がいつになるのかは「分からない」とWei氏は語った。

「橋の完成後も、われわれは新たな課題に直面する。いかに効率よく運営し、地域全体を実際に利することができるかということだ」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中