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フランス大統領選にロシアが干渉か 米情報当局が明かす

2017年5月10日(水)12時19分

5月9日、フランス大統領選で、ロシア政府と関係があるとみられるハッカー集団が中道系独立候補のマクロン氏の形勢を悪くするため同氏の陣営を攻撃し、電子メールやその他のデータを流出させたことが、米情報当局者2人の話で明らかになった。写真は上院軍事委員会の公聴会で証言する国家安全保障局(NSA)のロジャーズ局長(2017年 ロイター/Aaron Bernstein)

フランス大統領選で、ロシア政府と関係があるとみられるハッカー集団が中道系独立候補のマクロン氏の形勢を悪くするため同氏の陣営を攻撃し、電子メールやその他のデータを流出させたことが、米情報当局者2人の話で明らかになった。

この問題を巡っては、国家安全保障局(NSA)のロジャーズ局長は9日に開かれた上院軍事委員会の公聴会で電子メール流出のかなり前から「ロシアの活動に気付いた」と証言。「われわれは(フランス側に)注意喚起した」と述べた。

電子メールは7日の大統領選決選投票の2日前に流出。親欧州連合(EU)派のマクロン氏は決選投票で反EU派の極右政党・国民戦線(FN)のルペン候補を大差で破り、当選を決めている。

前出の米情報当局者や米国の調査に詳しい別の関係者4人は、ロシア政府が国内情報機関にハッキングを指示した、あるいはロシア情報機関がハッキングを主導したことを示す決定的な証拠は見つかっていないと認めた。

そのうちの1人はハッキングを行った組織は「ロシア情報機関と関係があることが知られている」と述べた。

ロシア政府はフランス大統領選に干渉した疑惑について繰り返し否定している。

米関係者のうち2人と欧州当局者1人は、ロシアが少なくとも2月以降、マクロン陣営を標的にしたことを示す明確な証拠があると述べた。

米セキュリティー会社のフラッシュポイントは前週末に、マクロン陣営のデータ流出に「APT28」や「ファンシーベア」として知られるハッカー集団が関与した可能性を指摘。同集団は、ロシア軍の情報機関、参謀本部情報総局(GRU)に関係があると情報当局者らは結論付けている。

米関係者2人によると、ロシア人ハッカー集団などはルペン氏を有利にするための取り組みを、選挙戦の終盤にかけて加速させたという。

そのうち1人は「ルペン氏とマクロン氏が決選投票に進んでからは、ルペン氏が勝利するようあらゆることを実施した。それにはハッキングや(ロシア国営メディア)RTとスプートニクのフランス語放送を通じたプロパガンダや偽ニュースの拡散を含む」と述べた。

別の当局者らによると、流出したとされるマクロン陣営のデータには私用メールとみられるものや海外の銀行口座の記録が含まれていた。マクロン氏は銀行口座の記録は偽造されたと主張している。

[ワシントン 9日 ロイター]


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