最新記事

日本経済

人手不足でもIT投資増えない日本の謎 停滞続けば国際競争で埋没

2017年4月4日(火)11時14分

4月3日、3月日銀短観で「人手不足」の深刻化が鮮明になったが、それを補うはずの企業の情報化(IT)投資の伸びは鈍い。日銀本店で2016年9月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

3月日銀短観で「人手不足」の深刻化が鮮明になったが、それを補うはずの企業の情報化(IT)投資の伸びは鈍い。この「ナゾ」の背景には、数年前のIT投資が成果に結びつかず、空振りに終わったトラウマがあるようだ。このまま投資が停滞すれば、IoT(モノのインターネット化)で米独などに水を空けられ、今後の日本企業の国際競争力にとって致命的な打撃になりかねないと政府部内に危機感が高まってきた。

人手不足は深刻化

今回の短観では、バブル末期の1992年以来の人手不足感となった。また、コスト増を売り上げ増でカバーできず、2017年度は全規模・全産業で増収減益見通しとなっている。

こうした状況では、省力化や合理化投資を中心に設備投資は強まると期待されてきた。特に高付加価値を狙ったIoTや人口知能(AI)の本格普及時代を迎えて、情報化投資は急増するとの予想が、専門家の中でも根強くあった。

実際、日銀短観の設備投資を見ると、ソフトウエア投資が16年度の2.2%増(全規模合計)から17年度には3.1%増にやや伸びを高めた。中でも中堅製造業や中小企業は、2桁増を見込んでいる。

日本政策投資銀行は全国設備投資計画調査において、2年前から10年ぶりに情報化投資の調査を開始した。

その結果、16年度の情報化投資は全産業で前年比26.1%増と設備投資全体の伸び率の同17.8%増を上回った。特に非製造業では36.4%と高い伸び。「人手不足とIT化の流れが、情報化投資を押し上げている」(産業調査部)と見ている。

日本企業のIT投資意欲弱く、生産性伸びず

ただ、2010年代前半の日銀短観ソフトウエア投資と比較すると、伸び率の差は歴然だ。11年度が6.1%、12年度が4.8%、13年度が13.5%と2桁増の年もあった。ところが、ここ数年は2─3%にとどまっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、東アジアの海域に多数の艦船集結 海上戦力を誇

ワールド

ロシアの凍結資産、EUが押収なら開戦事由に相当も=

ビジネス

日経平均は3日続伸、1000円超高 AI関連株高が

ビジネス

伊藤園、飲料品の一部を来年3月から値上げ お~いお
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中