最新記事

北朝鮮

北朝鮮近海に米軍が空母派遣、金正恩の運命は5月に決まる?

2017年4月10日(月)13時30分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

原子力空母カール・ビンソン(2017年1月撮影) U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Tom Tonthat/Handout via Reuters

<米軍はシリアにミサイル攻撃を行ったが、一方で、北朝鮮近海に向け空母を展開させ始めている。先の米中首脳会談でも議題は北朝鮮問題だった。今後の朝鮮半島情勢は韓国次第かもしれない>

米太平洋軍のデーブ・ベンハム報道官は8日、西太平洋の即応態勢とプレゼンスを維持するため、原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群を北に向かわせていると明かした。

金正恩氏のトイレ問題

空母打撃群は、寄港先のシンガポールからオーストラリアに向かっていた途上で北上を命じられた。目的は何か。ロイター通信は米高官の話として、弾道ミサイル発射など挑発行為を繰り返す北朝鮮に対し、「存在感を高めていく必要がある」と述べたと伝えている。

筆者は先日、「米軍が9日にも北朝鮮を攻撃する」との怪情報が永田町などで出回っていたことについて書いたが、もしかしたらこの情報は、米海軍の方針が誤って伝わったものだったのかもしれない。

一方、北朝鮮外務省は同日、米軍のシリア攻撃を非難する報道官談話を発表した。北朝鮮は第4次中東戦争に派兵して以来、シリアと緊密な関係を維持している。

(参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘

談話は、「一部では、シリアに対する米国の今回の軍事攻撃がわれわれを狙ったいわゆる『警告』の行動だと喧伝しているが、それに驚くわれわれではない」としながら、「核戦力を強化してきたわれわれの選択が全く正しかった」ことがわかったと主張している。

たしかに、北朝鮮が核武装してしまったいま、トランプ政権といえども簡単に手出しをすることはできない。そんなことをすれば、同盟国である韓国と日本に危険が及ぶ。

とはいえ、トランプ政権が現在の「経済制裁いっぽんやり」に満足していないのは確かだ。

米フロリダ州パームビーチで7日まで2日間にわたった米中首脳会談で、トランプ大統領と習近平国家主席は北朝鮮問題をめぐり、どのような協力を行うか、具体的な合意に到達できなかったようだ。

従来、米中首脳は会談後に共同会見を開くか、成果がなかった場合にも共同声明を発表してきたが、今回はそのどちらもなかった。ティラーソン米国務長官が会見で、北朝鮮問題に関する首脳会談の内容を簡単に伝えただけだ。

トランプ氏はこれまで「中国が(北朝鮮への圧力を)強化しなければ、独自に行動する準備ができている」と発言してきた。いよいよしびれを切らしたら、どのような行動に出るのだろうか。考えられるオプションのひとつに金正恩党委員長に対する「斬首作戦」があるが、これは韓国軍の協力なしに実行することは不可能だろう。

ほかにも、韓国の意向によって、米国が対北朝鮮で出来ることと出来ないことには大きな差が出てくる。ということは、5月に行われる韓国大統領選の結果が正恩氏の運命に大きく影響する可能性があるということだ。

韓国大統領選ではこれまで、北朝鮮に融和的とされる文在寅(ムン・ジェイン)候補が独走してきたが、中道系の安哲秀(アン・チョルス)候補が猛追するなど、風雲急を告げる展開となってきた。

正恩氏はおそらく、トイレさえ自由にならない厳戒態勢の中、自身を取り巻く情勢の成り行きを、固唾をのんで見守っていると思われる。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

追加協調放出含め、さらなる対応を機動的に講じる準備

ワールド

トランプ氏、ホルムズ開放なければ「カーグ島」標的と

ワールド

米提案「非現実的」とイラン、イエメンなどからイスラ

ビジネス

ECB、政策調整でためらいや先回りはせず=レーン専
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中