最新記事

イエメン

米軍の死者を出したトランプ初の軍事作戦は成果なし

2017年3月1日(水)16時55分
コナー・ギャフィー

内戦や飢餓で混乱が続くイエメン Khaled Abdullah-REUTERS

<今年1月29日、トランプ政権が初めて行った軍事作戦は、米軍兵士に死傷者が出てその意義を問われていたが、当初政権が主張していたような重要な情報は得られていなかったことが明らかになった>

米軍がイエメンで行った過激派組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」の掃討作戦でネイビーシールズ(海軍特殊部隊)の兵士が死亡した問題で、作戦では当初言われたような重要な情報は得られなかったことがわかった。安全保障当局者がNBCに語った。

この作戦はイエメン北部ベイダのガイファ地区で実施されたもので、トランプ大統領が承認した初めての軍事作戦。

【参考記事】イエメンでの対テロ作戦はトランプ政権の失点なのか

英NPOの調査報道協会(BIJ)によると、この作戦で犠牲になった民間人は少なくとも25人。うち9人は子供だという。また、特殊部隊のウィリアム・ライアン・オーウェンズ隊員も死亡した。

オーウェンズ隊員の父親ビル・オーウェンズは、地方紙マイアミ・ヘラルドに対し、「イエメンでの作戦行動はもう何年も空爆とドローン攻撃だけに限っていたのに、なぜ突然陸上作戦が承認されたか理解できない」と語った。

【参考記事】対イエメン軍事作戦終了を歓迎、政治解決が必要=イラン外相

この作戦についてある下院議員は、トランプ政権が地上部隊を派遣した理由が未だに説明されていないとしたうえで、AQAPによるアメリカへの新たな脅威が生じたとは認識していないと語った。

「アメリカを救う情報」とは

作戦についてブリーフィングを受けた政府高官によれば、これは「捕獲または殺害」作戦だったという。軍は当初、これを否定した。国防総省はこれを「情報収集」作戦と位置付けていたからだ。

共和党のジョン・マケイン上院軍事委員長がのちに、これは「捕獲または殺害」作戦だったと指摘すると、今度は国防総省も否定しなかったが、標的が誰かは明かさなかった。

ショーン・スパイサー報道官は今週月曜、ビル・オーウェンズの発言を取り上げ、シールズの犠牲は「英雄の死」と称し、「作戦を通じて入手した情報がアメリカを救うだろう」と言った。

この作戦による米軍の犠牲はオーウェンズ死亡のほか6人が負傷。7500万ドルのオスプレイが破壊された。

スパイサー報道官は、米国防総省がこの作戦について3件の調査を開始したと発表している。

イエメンでは内戦の混乱に乗じてテロ組織AQAPが勢力を拡大。アメリカは現地でAQAP掃討作戦を展開している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中