最新記事

ドイツ

ドイツ「庶民派」シュルツ氏、連邦議会選でメルケルに勝てるか

2017年2月28日(火)10時48分

 2月22日、ドイツ国内での行政経験といえば市長だけ、対する相手は欧州最強の指導者だ。それでもドイツ社会民主党(SPD)のマルティン・シュルツ氏(写真)は、11年にわたるメルケル政権に終止符を打ち、欧州におけるドイツの役割を根本的に変えようと考えている。仏ストラスブールで1月撮影(2017年 ロイター/Christian Hartmann)

ドイツ国内での行政経験といえば市長だけ、対する相手は欧州最強の指導者だ。それでもマルティン・シュルツ氏は、11年にわたるメルケル政権に終止符を打ち、欧州におけるドイツの役割を根本的に変えようと考えている。

彼がそれに成功しないとは言い切れない。

9月24日に行なわれる独連邦議会選挙に向けて、ドイツ社会民主党(SPD)がメルケル首相に対抗する首相候補としてシュルツ氏を指名して以来、SPDの運命は一変した。

メルケル首相が率いる保守派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との支持率の差は縮まり、ある世論調査では逆転にまで至っている。

シュルツ氏とは何者か──。メルケル首相より1つ年下のシュルツ氏は61歳で、欧州議会の前議長だ。メルケル首相が物理学の博士号を持っているのに対し、シュルツ氏は卒業試験も受けずに大学を辞めて地方政界で働き始め、その後は欧州政界へと進んだ。メルケル氏とは比べものにならない雄弁さと親しみやすさが彼の強みだ。

また、それ以上に、彼は「変化」を打ち出している。緊縮財政を強要して南欧諸国からの恨みを買うという従来のドイツの役割を捨て、国内では財政規律にそれほどこだわらず財政支出を増やそうとしている。

行政府での経験がないシュルツ氏がメルケル首相に勝利することは大変な難業である。彼女は欧州の安定の礎石であり、オバマ前米大統領も、退任を控えて昨年11月にベルリンを訪問し、メルケル氏への支持を表明したほどだ。

だが、シュルツ氏は意気軒昂だ。

「わが国に公正さを」。ドイツ北西部ビーレフェルトで20日に行なわれたSPDの集会で、シュルツ氏はそう叫び、数百名の支持者から喝采を浴びた。彼は党の支持基盤の掘り起こしのため、多くの街を訪れている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、31万人に学生ローン免除 美術学校

ワールド

米名門UCLAでパレスチナ支持派と親イスラエル派衝

ビジネス

英シェル、中国の電力市場から撤退 高収益事業に注力

ワールド

中国大型連休、根強い節約志向 初日は移動急増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中