最新記事

イスラエル

ネタニヤフがトランプに問い質したい6つの懸案

2017年2月15日(水)18時00分
エミリー・タムキン

大統領選中の昨年9月、ニューヨークで会談したトランプ(左)とネタニヤフ Kobi Gideon/REUTERS

<大統領選中はイスラエル寄りの発言を繰り返し、パレスチナ和平をぶち壊しかねない勢いだったトランプと、15日の首脳会談を心待ちにしていたイスラエルのネタニヤフ首相。実際には何が話し合われるのか>

アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は水曜、ワシントンで初会談に臨む。少なくともネタニヤフにとっては待ちに待った会談だ。トランプの大統領就任に祝辞を送り、訪米に先立ってアメリカとイスラエルの同盟関係は「一層強くなろうとしている」とツイートした。記者団に対しても、トランプと「率直に語り合う」と述べている。

だが、イスラエルとアメリカの絆をことさらに強めなければならないのは、両国の間に深刻な問題が横たわっているからにほかならない。今回のトランプ・ネタニヤフ会談で話題に上りそうな話は以下の6つだ。

入植)サマンサ・パワー前米国連大使は2016年12月23日、イスラエルが占領地のガザ地区や東エルサレムなどで行う入植活動の停止を求める国連安保理の決議案への投票を棄権した。アメリカが拒否権を行使しなかったことで、決議案は採択された。

【参考記事】
イスラエルの入植に非難決議──オバマが最後に鉄槌を下した理由

この行動を、トランプとネタニヤフはともに公然と批判した。イスラエルはその後、入植を急速に拡大した。ところがトランプは、ネタニヤフの訪米数日前になって、入植は和平交渉のためにならないという考えを示した。

【参考記事】トランプはどこまでイスラエルに味方するのか:入植地問題

イスラエルに対するトランプの姿勢が、親イスラエルから、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を目指した前政権の方針を引き継ぐ方向へとシフトしたことを伺わせる動きだ。それまでのトランプは、在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移設すると公約したり、駐イスラエル大使に入植を支持する強硬派のデービッド・フリーマンを指名したりしていた。

国連)トランプは米国連大使指にニッキー・ヘイリーを指名したが、議会の指名承認公聴会の前に何の合意形成も行っていないようだった。唯一意見が一致したのは、国連のイスラエルに対する扱いが不当だということ(これに関してはネタニヤフもまったくの同意見である)。指名承認公聴会の席上では、国連がイスラエルに対する姿勢を変えない限り、アメリカは国連への分担金支払いを取りやめるという考えも示唆された。

さらに、ヘイリーは2月10日、パレスチナ自治政府のサラム・ファイヤド元首相を国連リビア特使に任命するアントニオ・グテレス事務総長の初の人事案に反対した。パレスチナは国連の正式な加盟国ではないからだ。外交筋によれば、国連関係者はアメリカから事前にファイヤドの特使就任を承認するという連絡をもらっていたにも関わらず。いったい政権内部の意思統一はどうなっているのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中