最新記事

ワークプレイス

講義室をなくし、「反転授業」を実践するエンジニア教育再生の拠点

2017年1月20日(金)17時58分
WORKSIGHT

wsYork_4.jpg

コミュニケーションスペース。学生と教員が分け隔てなく交流し、問題解決を図る。

wsYork_5.jpg

学生たちが集まりディスカッションできるスペースがフロアのあちこちに点在しており、プロジェクトワークの種類に応じて個室も選択できる。Wi-Fi完備で廊下にもスクリーンがある。

wsYork_6.jpg

大きなセミナールーム。研究発表会、投資家へのプレゼンテーションなど人数にあわせたコミュニケーションスペースが用意されている。

大講堂での講義を減らし、実践に時間を割く

 2つめの理念が「反転授業」。一般的な大学では教授が大講堂で講義を行い、生徒は授業以外の時間に個々の課題に取り組む。しかしラソンドでは、学生はあらかじめ自宅や図書館などでオンライン講義を受け、授業ではディスカッションや実技を行う。

 講義ではなく実践に時間を割く、最新の教育システムだ。そのため建物自体も反転授業に最適化させた。設計に携わったZASアーキテクトのコスタス・カツァラス氏は次のように語る。

「講義室をなくしたかわりに、校舎内の至るところにコミュニケーションスペースを設置しました。廊下のホワイトボードや様々なラボ、地下の広いガレージもそう。反転授業を効果的に行うには、学生たちが時間や空間の隔てなくシームレスに交流しあい問題解決に取り組む、ソーシャルな環境が欠かせません。この大学は授業を受ける場所ではなく、"コラボレートする場"なのです」

エンジニアリングは「世界を変える」ためにある

 3つめが「50/50チャレンジ」。現在カナダでは、エンジニアリングを学ぶ女性は学生全体の17〜18%程度。男女比の偏りを是正する。

「これではまるで母や娘、妹のいない食卓のよう。エンジニアリングの世界は女性の視点を見失いがちです。このままではいけない。女性エンジニアの育成は、当校の大事なミッションの1つです」(コジンスキー氏)

 何のためのエンジニアリング教育か。世界の問題を解決するためである。そう考えるラソンドに集まる学生もまた「世界を変えたい」という言葉を口にする若者たちだ。はじめに情熱ありき。1年次の最初の1カ月は解決するべき問題を徹底的に考えさせるというカリキュラムが一層学生の情熱をたきつける。

「まず"自分のパッション・プロジェクトを作りなさい"と指導します。アフリカで水の浄化システムを作りたい、貧しい人に食べ物を届けるスマホアプリを作りたい。そういう情熱が大切です。数学や物理を学ぶのはそのあとでいい。プロジェクトを実現させるためには、何が必要なのか。学生自らが学びの必要性に気づく。私たちのカリキュラムはそこから始まるのです」(コジンスキー氏)

【参考記事】光と優秀な人材を取り込む「松かさ」型ラボ

wsYork_7.jpg

(左)窓枠が深くとられているのも、学生が座って勉強したり、議論の際のデスクとして使えるようにとの意図がある。(右)エントランスを入ってすぐに鎮座する象徴的な内階段。上下階のコミュニケーションを高める狙いがある。

wsYork_8.jpg

(左)天井が高く自然光がたっぷり入るカフェテリアは、居心地の良い空間の1つ。学生、教授、職員のコミュニケーションの場としても活用されている。(右)学生はラボに置かれている工作機械を自由に使うことができる。とくに切削加工のための旋盤は各メーカーの最新モデルが揃っており、多様な加工が可能。さらにマイクロコンピューターやマイクロチップの製造機械、独自の濾過システムを使ったクリーンルームも用意されている。

wsYork_9.jpg

土木工学のためのラボの一角。水圧でコンクリートや鉄の強度をテストする。振動が周囲に影響しないよう、「建物のなかに建物がある」独立構造。

ニュース速報

ビジネス

コロナショック、経済構造変化の可能性無視できず=日

ワールド

欧州司法裁、米国へのデータ移転の枠組みに無効判断

ワールド

中国、ウイグル族弾圧否定 確認のため米国務長官に訪

ワールド

中国、英のファーウェイ排除に対抗措置の用意=商務省

MAGAZINE

特集:台湾の力量

2020-7・21号(7/14発売)

コロナ対策で世界に存在感を示し、中国相手に孤軍奮闘する原動力を探る

人気ランキング

  • 1

    中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染

  • 2

    韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?

  • 3

    東京都、新型コロナ新規感染286人で過去最多を更新 「GoToトラベル」は東京除外で実施へ

  • 4

    香港国家安全法という中国の暴挙を罰するアメリカの…

  • 5

    「BCGは新型コロナによる死亡率の軽減に寄与している…

  • 6

    マスク姿で登場したトランプ米大統領とジョンソン英…

  • 7

    インドネシア、地元TV局スタッフが殴打・刺殺され遺体…

  • 8

    新型コロナの起源は7年前の中国雲南省の銅山か、武漢…

  • 9

    中国に不可欠な香港ドル固定相場制度、米国と対立で…

  • 10

    香港「一国二制度」の約束をさっさと反故にした、中…

  • 1

    中国・長江流域、豪雨で氾濫警報 三峡ダムは警戒水位3.5m超える

  • 2

    「金正恩敗訴」で韓国の損害賠償攻勢が始まる?

  • 3

    東京都、新型コロナウイルス新規感染206人 4日連続200人台、検査数に加え陽性率も高まる

  • 4

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 5

    中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗…

  • 6

    中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊は…

  • 7

    生き残る自動車メーカーは4社だけ? 「ゴーン追放後…

  • 8

    世界へ広がる中国の鉱物資源買収 オーストラリア・カ…

  • 9

    新型コロナの起源は7年前の中国雲南省の銅山か、武漢…

  • 10

    香港国家安全法という中国の暴挙を罰するアメリカの…

  • 1

    中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊はあり得るのか

  • 2

    「金正恩敗訴」で韓国の損害賠償攻勢が始まる?

  • 3

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 4

    中国・長江流域、豪雨で氾濫警報 三峡ダムは警戒水位3…

  • 5

    科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求…

  • 6

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪…

  • 7

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 8

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 9

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 10

    東京都、新型コロナウイルス新規感染206人 4日連続2…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月