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大韓航空パイロットがスト 元凶は高給で引き抜きをする中国?

2016年12月23日(金)07時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


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ストライキに入った大韓航空のパイロットたち © 공공운수노조


 このイ労組委員長の語るように、大韓航空のパイロットのうち2013〜14の2年間に9人が、そして昨年は一気に46人が中国の航空会社に転職している。ほぼ毎週1人中国に引き抜かれた計算だ。同じ韓国のアシアナ航空でも2014年に6人、昨年は15人が海外の航空界会社へと転職している。韓国国内に乗り入れる海外の航空会社が増えていることはもとより、世界的に航空業界の競争が激化しており、いきおいパイロットの奪い合いが起きているのだ。

 なかでも中国と中東の航空会社の成長はめざましく、中国の航空市場は年平均5.5%の伸びを示しており、2029年には世界最大の旅客市場になると予想されている。一方の中東では、経済制裁が解除されたイランを筆頭に新型機の発注ラッシュとなっており、これから優秀なパイロットを海外から迎え入れようとしている。

チャイナマネー、オイルマネーが空を飛ぶ

 こうした状況で韓国の航空業界はパイロットにとって好待遇を用意できていないのが実情だ。例えばキャリア15年の機長の手取り年俸は一般に1,500万円前後といわれる。しかし、中国の航空会社では、年俸2,000〜3,000万円を提示して引き抜きをしているという。こうした"チャイナマネー"によって、昨年は韓国の航空会社から海外の航空会社へ転職したパイロットのうち、実に9割が中国を選んだ。こうした事態に対抗策をとりたくても、大韓航空、アシアナ航空は、資本に対する負債比率がそれぞれ917%と715%という状態。これではいい人材をつなぎ止めるためにベースアップはしたいものの、無い袖は振れない、というのが会社側の本音だろう。今のところ大韓航空の経営陣とパイロット労組双方の主張の隔たりは大きく、妥協点をどこに見出すせるか、交渉の先行きは見えない。

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