最新記事

米ルビオ議員、南シナ海の領有権問題で対中制裁法案──トランプ新政権に行動を促す

2016年12月8日(木)18時00分
エミリー・タムキン

 外交政策に詳しい一部のアナリストは、中国を牽制する手段として今回の法案を歓迎した。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員で中国専門家のボニー・グレイザーは米フォーリン・ポリシー誌の取材に、「アメリカが南シナ海と東シナ海をめぐる中国の方針に影響を与える手段を多数握っていることを、中国側に知らせる」効果があると評価した。

 たとえ法案が否決されても、次期米政権への合図にはなるとグレイザーは言った。領有権問題でアメリカが主導権を握り周辺諸国から信頼性を取り戻すためには、こういう方法もあると知らせることになる、というのだ。

 だが外交シンクタンク「ニュー・アメリカ」の研究員で中国に詳しいチェン・ワンは、「政治的な色合いの強い」動きは中国の反発を招くと指摘した。彼によると、7月にオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所が南シナ海の領有権問題で中国の主張を「根拠なし」としてフィリピンの完全勝利に近い判決を下して以来、中国側の動きは比較的抑えられている。だとすれば、ルビオが提案する制裁は中国側を当惑させるだけで、「米中の2国間関係とアメリカの国家安全保障にとって弊害でしかない」。

【参考記事】仲裁裁判所の判断が中国を追い詰める

イラン制裁法の延長も

 だが米議会が狙いを定めるのは、中国だけではない。上院で1日、今月末に期限を迎えるイラン制裁法を10年間延長する法案を賛成多数で可決した。下院では、駐米のロシア外交官が赴任地から40キロ以上離れた場所に出かけるのを制限する法案が通過し、上院の可決を待つ。ロシア政府は7日、もし米議会で法案が成立する事態になれば、アメリカの外交官に対して同様の報復措置を取る方針を鮮明にした。

 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、米政府当局が「互恵関係の原則という外交の基本」を思い起こす方が賢明だと述べ、米議会の動きを牽制した。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英財務相、11月26日に年次予算発表 財政を「厳し

ワールド

金総書記、韓国国会議長と握手 中国の抗日戦勝記念式

ワールド

イスラエル軍、ガザ市で作戦継続 人口密集地に兵力投

ビジネス

トルコ8月CPI、前年比+32.95%に鈍化 予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中