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キューバ

カストロの功罪は、死してなおキューバの人々を翻弄する

2016年11月28日(月)17時30分
トレイシー・イートン

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キューバ系移民が多く暮らすマイアミのリトルハバナでは人々がカストロの死去を祝福した Javier Galeano-REUTERS

 過去数十年に渡って、多くのキューバ人がカストロ政権を見限ってアメリカへと亡命した。現在全米には推定110万人のキューバ系住民がいるが、そのうち約62万人はマイアミ周辺地域で暮らしている。

 60年代にアメリカに亡命した人たちは、数年後にはカストロ政権が倒れてキューバに戻れると期待していた。しかし社会主義政権はその後も継続し、亡命した人々は結局フロリダで生活し続けることになった。

 その1人マックス・レスニクは、キューバ革命でカストロと共に戦ったが、キューバがソ連と同盟関係を結ぶようになった61年にアメリカに亡命した。マイアミで「レプリカ」という雑誌を創刊し、アメリカの禁輸措置に反対する活動を行った。反カストロの活動家からは殺害の脅迫を受け、事務所が爆弾テロに遭ったこともある。カストロは76年にレスニクをキューバに招待し、そこで2人は和解した。

 レスニクはカストロが「世界で最も強大な権力であるアメリカと対峙し、完遂した稀有な革命家」として記憶されるだろうと語る。「カストロの生涯の最後にアメリカは、キューバ革命に反対する米外交が間違っていたことを認めた。彼の生涯の努力は報われた」

【参考記事】オバマの歴史的キューバ訪問で、グアンタナモはどうなる?

 それでもキューバ人の多くが、カストロの死と共に変革が訪れることを期待している。すでに近年の変化はめざましい。弟ラウルの政権下では私有資産の一部が認められ、アメリカとの国交正常化も果たした。

 数年後の将来、キューバ人がどのようにカストロを振り返るか、それはまだわからない。ハバナの大学で教授を務めるハロルド・カルデナスは、カストロの業績の評価は両極端に分かれているため、客観的に見ることが難しいと話している。「誰もが感情的になって真実が見えなくなっている」

 しかし、カストロが20世紀で最も重要で影響力のあった人物の1人であることは確かだ、とカルデナスは言う。「我々の世代の全てのキューバ人の人生は、カストロによって運命付けられた」

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