最新記事

話題作

『ファンタスティック・ビースト』で帰って来たハリポタの魔法の世界

2016年11月24日(木)18時20分
ダン・コイス

今後の続編で報われそう

 筋書きもいまひとつだ。人々が殺され、ニュートが魔法動物を解説し、物事はひっくり返る。しかしすべてがどこかばらばら。周囲の人間がニュートを評価するようになっていく理由もはっきりしない。

 ニュートは有能で勇敢だが、あまりに無口過ぎる。彼がおしゃべりなコワルスキーと初めて会ったときのコミカルな感じは、話が進むにつれてどんどん薄れていく。脚本がおかしいのだろうが、レッドメインがカリスマある魅力を徹底的に抑えているのを見るのはつらい。

 イエーツの戸惑いも伝わってくる。これまでどおり特殊効果には自信があるが、ごく普通の会話や掛け合いは苦手なようだ。ジョークは笑えず、やたら冗長な場面もある。コワルスキーとティナの妹クイニーが出会うところでは、感情も魔法もすべてが大げさで苦痛に感じるほどだ。

【参考記事】台湾生まれの日本人「湾生」を知っていますか

 だが呪文が飛び交う場面では、すべてが変わる。「目のある黒い風」は見栄えのする敵ではないが、これだけ見どころの多い映画が楽しくないわけはない。新セーレム救世軍を率いるメアリー・ルー・ベアボーン(サマンサ・モートン)の変なアメリカ英語、巨大な魔法動物に追われるコワルスキー、ダンブルドアとレストレンジという名前、最後に登場する大物――。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が人物像とゲームのルールを作り上げるという退屈な仕事を担ったことは、今後の作品で報われそうだ。

 何しろ、最初から成功する映画シリーズは珍しい。『ハリー・ポッターと賢者の石』だって見るに堪えないほどだった。でもやがてシリーズの魔法にみんながかかっていった。


<お知らせ>
 好評発売中!
 ニューズウィーク日本版Special Edition
『ハリー・ポッター』魔法と冒険の20年
 CCCメディアハウス


≪映画情報≫
FANTASTIC BEASTS AND WHERE TO FIND THEM
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

監督/デービッド・イエーツ
主演/エディ・レッドメイン、キャサリン・ウォーターストン
日本公開は11月23日

© 2016, Slate

[2016年11月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中