最新記事

ユーチューバー

【動画】共感を呼ぶ「私はムスリム」の優しさ

2016年11月24日(木)17時50分
トゥファエル・アフメド

撃て、と言わんばかりの姿で立つカシェフ ARIAN KASHEF

<「私はムスリム」と書いた札を提げ、目隠しをして街頭に立つユーチューバー。決死の行動に人々はどう反応したか>

 昨年11月、130人の死者を出したパリ同時多発テロの衝撃も冷めやらず、ヨーロッパ中に反ムスリムの嵐が吹き荒れていた時期、デンマークのユーチューバー(YouTubeの動画配信のプロ)、アリアン・カシェフは何か行動を起こそうと思い立った。

 カシェフはデンマーク第2の都市オーフス各地の人通りが多い場所を選び、「私はムスリム。だがテロリストではない。あなたは私を信頼してくれますか。イエスなら、私をハグしてください」と書いたボードの横に、無防備にも目隠しをして、腕を広げて立った。そしてその様子を撮影し、YouTubeで配信した。

 人々の反応は心温まるものだった。動画では通りすがりの男女、子供たち、さらに終わりのほうでは、やはり差別を受けがちな車椅子の男性がカシェフをハグする。

 15年11月22日にアップされてからほぼ1年。カシェフのささやかな実験を収めた動画は静かな共感を呼び、再生回数は40万回超に達した。そして今年11月中旬、信じ難いことが起きた。

 カシェフの動画はソーシャルメディアで取り上げられ、世界中に拡散し始めたのだ。きっかけは米大統領選だ。選挙戦中にムスリムをはじめマイノリティーを公然と侮辱してきたドナルド・トランプが勝利したことで、1年前のカシェフのように何かしなければと思う人たちが現れた。

ゼンデイヤもリツイート

 11月8日の投票日の4日後、ツイッターのユーザーがカシェフの動画を紹介。このツイートを映画『スパイダーマン』シリーズの新作でヒロイン役を務めた人気アイドルのゼンデイヤがリツイートした(彼女のフォロワーは690万人に上る)。ゼンデイヤの投稿はさらにリツイートされ、50万超の「いいね!」を獲得した。

 その翌日の11月13日、DJのサミー・アーサックがフェイスブックの公式ページでカシェフの動画を紹介。わずか1週間で、5800万回再生され、94万人の「いいね!」を獲得。シェア数は91万9000件に上った。

 動画に寄せられたコメントを見ると、「人々の反応に希望をみいだした」「寛容の精神が大事だ」といった内容がほとんどだ。カシェフのメッセージは確実に伝わったようだ。ある人はこう書いている。「あなたがムスリムでも、ゲイでも、非白人でも、何であれ、アメリカで肩身の狭い思いをすることはないし、怖がることもない。あなたはここに属している。私はあなたの味方だ」別の人はこうも言う。「胸が熱くなる動画だ。もちろん、私も彼をハグする」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中