最新記事

アメリカ経済

アメリカ大統領選にわかに緊迫化、ウォール街は株のヘッジ取引が急増へ

2016年11月4日(金)11時25分

11月1日、米大統領選は8日に投票日を控え、にわかに接戦の様相を呈してきた。共和党のトランプ候補が勝利して米株式市場が混乱に陥る可能性に備え、トレーダーはあわててヘッジ取引を増やしている。NY証券取引所で10月撮影(2016年 ロイター/Brendan McDermid)

米大統領選は8日に投票日を控え、にわかに接戦の様相を呈してきた。共和党のトランプ候補が勝利して米株式市場が混乱に陥る可能性に備え、トレーダーはあわててヘッジ取引を増やしている。

先週まで、大半の世論調査では民主党のヒラリー・クリントン候補がトランプ候補に支持率で水を開けていた。先月実施したロイター調査では、クリントン候補が勝利した方がトランプ候補勝利の場合よりも米国の株価に有利に働くとの見方が大勢を占めている。

しかし米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏の私用メール問題について捜査再開を発表したのをきっかけに情勢が一変。両候補の支持率が再び拮抗し、株式市場に動揺が広がっている。

今週に入り、株価が急変動した場合に利益を上げようと、市場の不安心理を示すCBOEボラティリティ指数(VIX指数)<.VIX>のコールオプションなどの建玉が増加し始めた。調査会社トレード・アラートによると、1日時点でVIXのコール(買う権利)の建玉はプット(売る権利)の3.5倍で、約半年で最も大きく差が開いた。

今月が期日の約定ではさらに差が大きく、コールがプットの4倍以上に達している。

VIX指数は長期平均の20を超え、7週ぶりの高水準をつけた。

チャールズ・シュワブのマネジングディレクター、ランディー・フレデリック氏は「VIX指数は6日連続で上昇した。つまり市場参加者はS&P総合500種株価指数<.SPX>のオプション価格を引き上げているということだ」と話した。

フレデリック氏はまた、VIXに加え、S&P500種指数に連動するETF(上場投資信託)であるSPYのオプションの出来高が膨らんでいることも、ヘッジ需要増加の兆しだと指摘した。

トレード・アラートによると、1日にはSPYオプションの出来高が1日平均の1.5倍に当たる380万枚に急増した。

中でも選挙日に近い期日のオプションが人気を集めている。トレード・アラートによると、SPYオプションでは投票翌日の9日に期日を迎える約定のインプライド・ボラティリティが22.2%と、全期日の中で最も高くなっている。この数値はS&P指数が急変動するリスクを反映するものだ。

権利行使した場合に利益がゼロとなる「アット・ザ・マネー」のプットオプションと、同種のコールオプションを同時に買う「ストラドル」のコストを見ると、株価が9日までに上下いずれかの方向に約2.4%変動する可能性が織り込まれている。

ヘッジ取引が著しく活発化したのはここ1週間。ほんの最近まで、大統領選結果によって株価が乱高下する可能性にトレーダーが真剣に備えている様子はうかがえなかった。

(Saqib Iqbal Ahmed記者)



[ニューヨーク 1日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中