最新記事

日ロ外交

プーチンの思うつぼ? 北方領土「最終決着」の落とし穴

2016年10月21日(金)10時30分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

 国後、択捉は19世紀半ばに日ロが国交を樹立した際に日本領と認められた。それ以来、1945年のソ連軍占領や47年の日本人住民の強制追放まで一貫して日本の実効支配の下にあった。日本はアメリカに言われたからではなく、自分のものだから返還要求をしているのだ。自国の領土を安易に譲る国家は世界で相手にされない。日本の場合、尖閣諸島、竹島だけでなく、沖縄にさえ手を伸ばしてくる国が出てくるだろう。

 領土問題は、常に「交渉を進めている」状態に維持しておく必要がある。でないと、相手の実効支配を黙認した格好になり、法的に不利になる。ロシア本土でインフラなどを両国が50対50の負担で建設したりして、ロシアをいつも引き付けておくことも必要だ。

【参考記事】盛り土は気になるけど、北方領土もね!

 共同開発するにしても、ロシアの実効支配を認めるべきではない。起こり得る刑事・民事上の係争をロシアの官憲がロシア法で裁くのをのんではいけないし、開発に当たっては日本人旧島民の地権も考えねばならない。

「最初に歯舞、色丹返還。次に国後、択捉の返還交渉」という2段階論は非現実的だ。ロシアは歯舞、色丹返還で最終決着だ、と主張するだろう。プーチン政権は、日本が考えるほど世界で孤立もしておらず、経済が崩壊間際でもないので、手ごわい。

 安倍政権は民進党内の足並みが乱れている今、「領土問題での成果」がなくても総選挙を打てる。12月のプーチン訪日で重要なのは、領土問題の最終的解決を焦ることなく、「日ロ関係と領土問題解決を前向きに進めていく枠組み」をしっかり、じっくり合意することだろう。

[2016年10月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ、最近の緊張にもかかわらず「中国より米国に近

ワールド

日経平均は続落、利益確定優勢 選挙控え方向感欠く

ワールド

メドベージェフ氏「世界紛争は望まず」 トランプ氏を

ビジネス

再送-ヤマハ発、25年12月期の純利益予想を下方修
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 7
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 8
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中