最新記事

2016米大統領選

最後のテレビ討論の勝敗は? そしてその先のアメリカは?

2016年10月20日(木)15時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

REUTERS

<投票前最後のテレビ討論は、大統領選に疑義を呈したトランプに批判が集中。一方で対イラク、シリア政策に関してこれまでより一歩踏み込んだヒラリーの発言が注目される>(写真:最後のテレビ討論はこれまでと比較すれば政策論争の体を成していた)

 現地時間19日夜、ネバダ州で第3回の大統領選テレビ討論が行われた。今回が最終回で、全米の有権者はここまで3回の討論を参考にして投票行動を決定する。先月26日の第1回討論でヒラリー・クリントン候補が優勢となった後、一連の「女性蔑視発言」スキャンダルが露見したドナルド・トランプ候補は終始劣勢と言われていた。

 今月9日の第2回討論でもその傾向は変わらなかったばかりか、その後トランプのスキャンダルは「発言問題」から「不適切な行為」へと疑惑がエスカレートしていた。そこで、ケーブルニュース各局は「トランプにとっては、この3回目が挽回のラストチャンス」と言って、討論の中継を盛り上げていた。

 この第3回の討論、司会したFOXニュースのクリス・ワレスはなかなか上手い進行を見せた。全体を6つのパートに分けて、両候補にはそれぞれの部分でテーマに沿った発言をするよう誘導し、話が脱線すると厳しく注意することもあった。

 結果として、第1回、第2回と比較すると、政策論争として一応の体を成したということは言える。要点をまとめると、以下のようになる。

【参考記事】非難合戦となった大統領選、共和党キーマンのペンスの役割とは

 まず一番話題になっているのは、選挙結果を素直に受け入れるのかという点だ。実は、先週以来トランプは「この選挙は歪められている」と主張して、場合によっては選挙結果に対する異議申し立てをすることも示唆していた。これには、副大統領候補のマイク・ペンス(インディアナ州知事)や、トランプの長女イヴァンカが明快に否定しており、陣営の足並みは揃っていない。

 そんな中、「選挙結果を受け入れて相手を祝福し、新政権への協力を誓うのがアメリカの伝統だが、どうか?」というワレスの質問に対して、トランプは「さあ、お楽しみに」("I will keep you in suspense.")と「ふてぶてしく」宣言した。これはアメリカの選挙制度、民主主義を信じないという意味にも取れるわけで、直後からメディアはこの発言への批判一色となっている。

 保守色が強く、今回の討論全体としては「トランプが押していた」という評価をするような評論家(例えばFOXのブレット・ヒューム)なども、この発言に関しては「重要であり、極めて問題」だとしているし、CNNなどはこの点への批判一色という感じで直後の「討論分析」を進めている。

 おそらく、翌日以降のメディアもこの点への批判を継続することになるだろうし、そうなればトランプの支持率は回復しないばかりか、中道票の獲得は困難になるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のレアアース等の輸出管理措置、現時点で特段の変

ワールド

欧州投資銀、豪政府と重要原材料分野で協力へ

ワールド

新たな米ロ首脳会談、「準備整えば早期開催」を期待=

ビジネス

米政権のコーヒー関税免除、国内輸入業者に恩恵もブラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中