最新記事

経営

ダメな会社には「脳外科手術」が必要だ

2016年10月14日(金)12時02分
ジョー・ディバンナ ※編集・企画:情報工場

 経営を変革することは、脳外科手術を行うのと同じとみなす経営コンサルタントは少なくない。すなわち手順にミスがあれば、新たな症状を併発(事態の複雑化)したり、もっと取り返しのつかない事態を招くことになったりしかねないのだ。また、変革の過程では、既存のルールやガイドライン、ポリシーやマニュアルなどをいったんすべて忘れ、「学び直し」をしなければならないことがほとんどだ。こうした「学び直し」がずるずると遅れるようなことがあると、臨機応変にビジネスを行うことが難しくなる場合もある。

組織の中の人がニューロンだとすると......

 組織のリーダーたちは、自身のリーダーとしてのあり方について、最新の脳科学の成果から気づきを得られるはずだ。私たちの脳の働きについては、10年前とは比べものにならないくらいたくさんのことがわかってきている。かつて科学者の多くは、人間の脳は幼児期に発達を完了すると考えていた。しかし今では、その次の段階である思春期を通しても重要な変化をし続けるとされている。学習経験によって脳内のニューロン(神経細胞)同士のつながりが絶えず書き直され、それは十分に成熟するまで続く。

 組織の中にいる人々が、それぞれ独自のスキルと知識を備えたニューロンだとしよう。何か新しいことを学ぶと、脳はその刺激の変化に対応してニューロン同士をつなぎ直す。これは、市場の変化に応じて企業の再編を行うのにそっくりだ。だが実際には、組織は変化に抵抗するため、脳の変化プロセスと完全に一致するわけではない。近づけるにはどうするか。どういうことが可能で、何が現実的か、もしくはどんなことがインパクトを与えるかなどに的を絞ったビジョンを、リーダーとメンバーが共有することだ。

 神経科学の新たな知見は、リーダーが「現状維持の圧力」を乗り越えるヒントを提供するかもしれない。それには、脳の記憶のメカニズムや、学習や環境変化に対する反応についてよく調べる必要がある。脳内には「ワーキングメモリー」と呼ばれるスペースが存在する。そこでは、知覚によって得られた外部刺激をそれまでに蓄えられた情報と照らし合わせ、それが新しいものであるかを判定する。その結果によって、刺激の処理方法を決めるのだ。

 新しくない、慣れ親しんだ刺激であれば、「ルーティン」としてワーキングメモリーの一部になる。たとえば車の運転を覚えようと数カ月も近所を乗り回していれば、何も考えずに運転できるようになる。周囲の環境に慣れることで、直感的に先を読めるようになるからだ。しかし車で初めての土地に出かけた時などには、ワーキングメモリーの力を借りなければならない。脳のワーキングメモリーは周囲の環境(新しい土地)を、これまでの経験による知識と比較し始める。そうしているうちに、比較的短い時間で新しい環境に慣れ、「何も考えない運転」ができるようになる。

【参考記事】頭が良すぎるリーダーの、傲慢で独りよがりな4つの悪い癖

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 5
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中