最新記事

北朝鮮

金正恩氏の「健康管理役」が日本に亡命か...激太りの理由が明らかに!?

2016年10月5日(水)14時05分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

KCNA/ via REUTERS

<金正恩(キム・ジョンウン)党委員長の健康管理に関わっていた北朝鮮の高官が北京で日本に亡命を求めたと、韓国紙が報じている。金正恩氏の体重はこの4年で90キロから130キロにまで増えたと推定されており、亡命が本当であれば、健康問題ひとつ取っても重要な情報をもたらすことになるだろう> (上:8月に朝鮮中央通信〔KCNA〕が公表した写真)

 韓国紙・中央日報は5日、北朝鮮の金正恩党委員長の健康管理に関わっていた北朝鮮の要人が日本に亡命を求めたと、消息筋の話として報じている。

「処刑の嵐」と体重変化

 核兵器やミサイル開発で国際社会に妥協を見せようとしない正恩氏だが、ストレスや太りすぎによる健康不安を抱えていることは、韓国の情報機関も報告している。朝鮮半島情勢を左右しかねない問題だけに、報道の真偽に注目が集まりそうだ。

 中央日報によれば、件の幹部A氏は、烽火診療所、南山病院、赤十字病院を管轄する保健省1局の出身。北京の北朝鮮代表部に駐在していたが、9月28日に日本大使館側と接触し、妻と娘を連れて日本へ亡命する意思を伝えたという。ただ、亡命先を巡っては現在、韓国と日本で「綱引き」を繰り広げている模様だ。

 韓国ではなく日本行きを望むのは、「日本に親戚がいるため」とされており、1950年代からの「帰国運動」で北朝鮮へ渡った、元在日朝鮮人の家系の出なのかもしれない。

 A氏はこれまで、正恩氏の健康とかかわる医薬品や医療機器の調達を担当してきたという。ならば、正恩氏の健康状態についてもかなりの分析材料を得ている可能性が高い。

 韓国の国家情報院(国情院)は7月1日、韓国国会で開かれた情報委員会の懸案報告で正恩氏の体重が130キロと見られるとの分析を示した。

 国情院によれば、金正恩氏の体重は「2012年に初めて登場したときは90キロだったが、2014年には120キロに、そして最近では130キロまで増えたと推定される」という。

 独裁者として贅を尽くしていることが肥満の原因とも思われるが、それにしても、あまりの変化だ。

 気になるのは、正恩氏が公開処刑の嵐を始めた時期と、急激に肥満度が高まる時期が一致する点だ。恐怖政治を激化させる中で、なんらかの猜疑心やストレス、プレッシャーにさいなまれたことが極度の肥満をもたらした可能性は充分にある。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」...残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

 国情院も、不眠症や身辺の脅威のために暴飲暴食に走り、成人病にかかっている可能性を指摘した。トイレひとつとっても、普通の人と同じ生活ができない不便さも影響していると思われる。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

 さらには核・ミサイル問題とからみ、「米国から狙われている」との思いからくる緊張もあるだろう。

 しかしそもそも、それらは自分のまいた種だ。正恩氏は自分の身の安全と健康、北東アジアの平和と安全がつながっていることを、早く理解した方が良い。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ――中朝国境滞在記』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)がある。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
dailynklogo150.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、第3四半期は黒字回復 訴訟引当金戻し入れ

ビジネス

JDI、中国安徽省の工場立ち上げで最終契約に至らず

ビジネス

ボルボ・カーズの第3四半期、利益予想上回る 通年見

ビジネス

午後3時のドルは152円前半、「トランプトレード」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選 イスラエルリスク
特集:米大統領選 イスラエルリスク
2024年10月29日号(10/22発売)

イスラエル支持でカマラ・ハリスが失う「イスラム教徒票」が大統領選の勝負を分ける

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと
  • 4
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 5
    トルコの古代遺跡に「ペルセウス座流星群」が降り注ぐ
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 8
    中国経済が失速しても世界経済の底は抜けない
  • 9
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 10
    「ハリスがバイデンにクーデター」「ライオンのトレ…
  • 1
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 2
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 3
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア兵の正面に「竜の歯」 夜間に何者かが設置か(クルスク州)
  • 4
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 5
    目撃された真っ白な「謎のキツネ」? 専門家も驚くそ…
  • 6
    ウクライナ兵捕虜を処刑し始めたロシア軍。怖がらせ…
  • 7
    逃げ場はゼロ...ロシア軍の演習場を襲うウクライナ「…
  • 8
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 9
    裁判沙汰になった300年前の沈没船、残骸発見→最新調…
  • 10
    北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすご…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 6
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 7
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 8
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 9
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 10
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中