最新記事

動物

【写真特集】アフリカ野生動物の密猟と食肉売買の現実

2016年9月6日(火)10時45分
Photographs by Stefano De Luigi

カメルーンのこの国立公園内では昨年も54頭のゾウが密猟者に殺され、現在では10頭ほどしか生き残っていない

<野生動物の食用肉「ブッシュミート」や象牙の取引のために、今もアフリカでは保護対象の動物たちを標的にした密猟が続いている>

 無残に散らばった動物の骨。カメルーンの国立公園内で、密猟者に殺された3頭のゾウのものだ。先進国でこうした光景を目にすることはまずないが、アフリカ中部のチャドやカメルーンでは、希少な野生動物が密猟や違法な商取引の犠牲になることは現在進行形の危機だ。

 そもそも野生動物を狩ることは、多くのアフリカ諸国において文化的な習慣であり、伝統の一部として受け継がれてきたもの。残酷に感じる人もいるかもしれないが、野生動物の死体から得た食用の肉「ブッシュミート」も、現地の人々にとっては伝統的な食材と言える。

【参考記事】<写真特集>娯楽で殺されるライオンたち

 現在ではこうした国々でも、保護対象の動物の商取引は、法律で禁止されている。問題は、法律違反であっても黙認されている場合が少なくないことだ。

 実際には、カメルーンの都市部の市場でも、ブッシュミートを見つけることはできる。当局の監視の目を逃れるようにひっそりとだが、確かにサルや鳥など狩の獲物となった野生動物が売られている。

ppanimal-map01.jpg

 地方に残る小規模な文化的習慣だった野生動物の肉の取引は、今や都市への人口流入とともに産業的な意味合いを持つようになった。さらに移民の増加に伴い、欧州各国でもブッシュミートの需要は高まっている。

【参考記事】<写真特集>ブラジルを悩ますロバの野生化

 欧州では、こうした取引が厳しく制限されてきた。だが現在では、フランスにはアフリカから毎年300トンもの野生動物の肉が持ち込まれている。しかも値段は、アフリカの市場に並ぶときの何倍にも跳ね上がる。

 もう1つの問題は、象牙の違法取引(1キロ当たり約700ユーロになる)が、両国に隣接するナイジェリアのテロ組織「ボコ・ハラム」の資金源になっている現実だ。金に目がくらむ者、象牙や野生動物を欲しがる人のエゴが、動物だけでなく人間の虐殺行為を後押ししている。

 現地の文化と先進国の消費者、さらにはテロ組織の思惑が入り乱れて複雑化する密猟の問題。根本的な解決は簡単ではないが、問題を放置することで危険にさらされるのは、野生動物だけではない。


ppanimal02.jpg

チャドの国立公園内で、環境保護と密猟の監視を目的とする民兵組織に拘束されたスーダン人の密猟者


ppanimal03.jpg

国立公園内でパトロールするカメルーン軍の特殊部隊

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中