最新記事

EU

難民を締め出したハンガリーに「EUから出て行け」

2016年9月14日(水)17時26分
ジョシュ・ロウ

Stoyan Nenov-REUTERS

<16日のEU首脳会談を控え、ルクセンブルク外相がハンガリーの難民対応を激しく非難。対するハンガリー外相は、タックスヘイブンの国に言われる覚えはないと反論し、加盟国間の亀裂が拡大している> (写真は、セルビアとの国境に有刺鉄線のフェンスを設置するハンガリー兵)

 重要なEU(欧州連合)首脳会談を目前に控えた今、ルクセンブルクとハンガリーが激しくやり合っている。一方は相手国の難民対応に噛みつき、他方は相手国のタックスヘイブン(租税回避地)政策を非難した。

 13日、ルクセンブルクのジャン・アセエルボーン外相は独ウェルト紙にこう語った。難民問題でEUの価値観を「著しく侵害している」ハンガリーをEUから締め出すべきだ――。シリアからの難民の通り道になっているハンガリーは、セルビアとの国境にフェンスを建設して国境を封鎖、難民を追い返している。言論の自由や司法の独立も尊重していない、とアセエルボーンは非難した。

【参考記事】「難民をトルコに強制送還」案にEUで異論噴出 トルコに対する警戒心も

 するとハンガリーのシヤルト・ペトロ外相は、タックスヘイブンのルクセンブルクには言われたくない、とやり返した。「同じルクセンブルク出身者のジャンクロード・ユンケル欧州委員長とそろって『負担の公平な配分』を語るとは片腹痛い」と、シャルトは言った。「ハンガリーには、他国の失敗による負担(難民)を負う義務はない」

10月初旬に国民投票

 こうした応酬は、EUの方向性を定める2つの転機を目前に交わされた。

 まず16日には、イギリスを除く27のEU加盟国首脳がスロバキアの首都ブラチスラバに集まり、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後の連合のあり方について議論する。他の首脳たちが統合の深化が必要だと考えるなかで、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相は「文化的な反革命」を遂行し、EUの政策立案の根幹にナショナル・アイデンティティ(国家的な同一性)を取り戻すと宣言している。

【参考記事】ポーランド右傾化で高まるEUとの対立懸念
【参考記事】ヨーロッパに忍び寄るネオ排外主義

 さらに10月2日、ハンガリーは加盟国に難民受け入れの割り当てを義務付けたEUの決定を受け入れるかどうかについて国民投票を実施する。今のところ、反対が多数を占める公算が大きい。そうなれば、EUが恐れていたEU離脱のドミノ倒しが始まることにもなりかねない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中