最新記事

欧州金融危機

イタリア大手銀行モンテ・パスキ再建に早くも黄信号

2016年8月2日(火)10時09分

 7月31日、イタリア銀行大手モンテ・パスキ再建計画の2つの柱である大規模な増資と不良債権売却の先行きに、早くも黄信号が灯っている。写真は同行の支店。パリで3月撮影(2016年 ロイター/Mal Langsdon)

 イタリア銀行大手モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)が29日に発表した再建計画は、同行の経営健全化だけでなく、イタリアや欧州全域に金融システム不安が波及するのを回避することなどを狙って大急ぎで取りまとめられた。しかし2つの柱である大規模な増資と不良債権売却の先行きに早くも黄信号が灯っている。

 特に再建計画成功の鍵は総額50億ユーロに上る増資を年内に完了できるかどうかが握っているが、時価総額が10億ユーロ弱で、2014年以降に80億ユーロもの資金を新株発行で調達し、すぐに使い果たしたモンテ・パスキにとっては無理難題とも言える。

 国際的な投資銀行が新株引き受けに仮合意しているとはいえ、その前提条件は大規模な証券化を通じた92億ユーロの不良債権売却が成功することだ。ただ、これほどの規模の証券化はイタリアでは過去に例がない。

 何人かの銀行関係者やファンドマネジャーは既に、この計画がうまくいくかどうか疑問を投げかけている。

 資産運用会社ハーミーズ・インベストメンツのクレジットアナリスト、フィリッポ・アロアッティ氏は「計画の2本柱にはともに崩れやすい要素がある。モンテ・パスキの過去の増資実績を踏まえれば、このような大掛かりな増資を完了するのは難しいだろう。また不良債権の証券化もとてつもない作業だ。実行に伴うリスクは著しく大きい」と述べた。

逆風の市場環境

 JPモルガンと伊メディオバンカは、サンタンデール、ゴールドマン・サックス、シティ、クレディ・スイス、ドイツ銀行、バンク・オブ・アメリカとともに、引受団を形成することに暫定的に合意した。

 だが少なくとも3行、インテーザ・サンパオロ、ウニクレディト、モルガン・スタンレーは引受団には加わらず、モンテ・パスキが十分な投資家の支持を得られるかどうか投資銀行業界にも懸念があることが浮き彫りになった。

 さらに引受団に入った銀行も、売れ残った新株を保有するという最終的な約束をしたわけではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=

ビジネス

NY外為市場=ドルまちまち、対円では24年12月以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中