最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

異例尽くしの共和党大会で見えた、「トランプ現象」の終焉

2016年7月22日(金)15時20分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

Aaron Bernstein-REUTERS

<トランプが指名候補を獲得し、最悪の事態は回避された共和党大会。しかし依然として政策上の分裂は埋められず、予備選で対抗馬だったクルーズは最後までトランプ支持を表明しなかった>

 今週18~22日の4日間にかけてオハイオ州クリーブランドで開催された共和党大会は、何もかもが異例だった。まず象徴的だったのは、地元の人気共和党知事で、ドナルド・トランプ候補に対抗して予備選を戦ったジョン・ケーシック知事が「不参加」を表明したことだ。

 ケーシックだけでなく、ブッシュ一家も同様で、「存命中の共和党の大統領経験者」が顔を見せない党大会となった。ちなみに、大会の前週にジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が、一家を代表してNBCのインタビューに応じ(インタビュアーは、ブッシュ元大統領報道官のニコル・ワレス氏)、「人々はトランプに騙されている」と激しい口調でトランプの代表候補選出に反対していた。

 党大会では、日替わりで大きなトラブルが発生した。初日の18日には、一部の「州代議員団」が自由投票を要求したり、「アンチ・トランプ」の看板を掲げたりして、公然と「造反」の姿勢を示して話題を呼んだ。

 この日はトランプのメラニア夫人が、夫を讃えるとともに自分の半生を振り返る演説を行ったが、一夜明けた19日からは、この演説が「盗作ではないか?」という疑惑が噴出して騒ぎとなった。2008年の民主党大会で、ミシェル・オバマ夫人が行ったスピーチからの「コピペ」ではないかというのだ。

【参考記事】トランプ夫人のスピーチ盗用疑惑も 異常事態続出の共和党大会

 トランプ陣営は強く否定したが、やがて否定しきれなくなり、20日になって「トランプの企業サイドのブレーンがゴーストライターで、その女性が責任を取って謝罪する」という流れになった。結果的に「コピペ」を認めた形で、またダメージコントロールに2日間を要したために、批判的な報道が垂れ流しされるままになった。

 この間、多くの政治家や支持者が演台に立ってスピーチしたが、具体的な政策論はほとんどなく、共通の話題は「ヒラリー批判」だけ。19日頃からは、参加者の間で「Lock her up!(牢屋にぶち込め!)」というフレーズが合言葉になり、何かにつけてそのチャント(合唱)が起こるようになった。

 このセンチメントに多くの政治家が「便乗」した。例えばニューヨークの元市長、ルドルフ・ジュリアーニ氏などは、9・11の同時多発テロ直後にはニューヨーク選出の上院議員だったヒラリーと二人三脚で、ニューヨークの復興や治安確保をやっていたことなどまったく無かったかのように「ヒラリーは嘘つき」だとジェスチャー付きで絶叫していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一

ビジネス

トランプ氏の銅関税、送電網などに使用される半製品も

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 国防相会談も開

ビジネス

インタビュー:米中心にデータセンター証券化で攻勢、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中