最新記事

イギリス

イギリスがEU国民投票で離脱を決断へ──疑問点をまとめてみた

2016年6月24日(金)16時35分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

勝利を喜ぶ離脱支持派 Neil Hall- REUTERS

 英BBCによると、23日にイギリスで行われた欧州連合(EU)を離脱するか、残留かについての国民投票で、離脱派が大勢を占める見込みとなったという。

 自分自身は残留を望んでいたので、残念だし、信じられない思いもする。これほどイギリス人はEU嫌いだったのかと愕然とする。

 離脱派が勝つ見込みとはいっても、残留支持派も半分近くいたわけだから、イギリスは大きく2つに割れたことになる。

 改めて、現状とこれまでの経緯をまとめてみた(23日付けの筆者の「まとめ」記事に追加しました。)

──結果は予想されていたか?

 今回の国民投票の結果ほど「予想がつかない」と言われた選挙はないといってよい。

 複数の世論調査では離脱派と残留派の意見が拮抗した上に、これまでのような総選挙と違い、過去の結果と比較しながらの判断ができなかったからだ。

──なぜ離脱派が支持されたのか?

 巨大になったEUの官僚体制への不満、ユーロ圏経済の混迷にみる先行き不透明感、難民問題に対処できずおろおろするEUといった、EU自体への不満に加え、国民に強い危惧感をもたらしたのが、移民流入問題だ。

【参考記事】EU離脱ならイギリスも世界経済も一大事

──EUはなぜ生まれた?

 EUはもともと、第2次大戦後、欧州内で2度と大きな戦争が起きないようにという思いから生まれた共同体だ。当初は経済が主体だったが、欧州連合(EU)という形になってからは政治統合の道を進んでゆく。

 単一市場に加入するという経済的目的を主としてEC(後にEUとして発展)にイギリスが加盟したのは1973年。当時は加盟国はイギリスを含めて9カ国。人口は約2億5000万人。現在は28カ国、5億人だ。

 当初は西欧の経済状態が似通った国が加盟国だったが、今は加盟国内での所得格差、失業率の差が大きい。

【参考記事】EU離脱、ブレグジットの次はフレグジットにスウェグジット?

 イギリスでは2015年、純移民の数が33万人となった。イギリスから出て行った人と入ってきた人の差だ。そのうちの半分がEU市民だ。イギリスは多くの人が使う国際語・英語が母語だし、失業率も低い。EU他国から働き手がどんどん入ってくるのも無理はない。人、モノ、サービスの自由化を原則とするEUにいるかぎり、市民がやってくることを止めることはできないのだ。

──なぜ今、国民投票が行われたのか?

 底流として長い間存在してきたのが、反欧州、あるいは欧州(=EU)への懐疑感情だ。大英帝国としての過去があるし、「一人でもやっていける」という感覚がある。

 社会の中の周辺部分、つまり、イギリスには階級社会の名残があるが、労働者階級の一部、および中・上流階級の一部に特にそんな感情が強い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉農相、自民総裁選出馬意向を地元に伝達 加藤財務

ビジネス

日銀には政府と連携し、物価目標達成へ適切な政策期待

ワールド

アングル:中国の「内巻」現象、過酷な価格競争に政府

ワールド

対ロ圧力強化、効果的措置検討しG7で協力すること重
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中