最新記事

欧州

EU離脱、ブレグジットの次はフレグジットにスウェグジット?

イギリスのような国民投票の実施を望む国が多いのはEU懐疑派増加のサインか

2016年3月15日(火)17時00分
ジョシュ・ロウ

そして誰もいなくなる? フランスの極右政党、国民戦線のルペン党首は国民投票を求める動きを歓迎する Vincent Kessler-REUTERS

 きっかけは「ブレグジット」だった。ブレグジットとは、イギリスがEUを離脱すること。今年6月23日に予定している国民投票で賛否を問うことになっている。その後、チェコのボフスラフ・ソボトカ首相は「チェグジット」という言葉を使って、EUの他の諸国にもEU離脱の連鎖が起こる可能性があると警告した。

 実際、最新の世論調査によれば、そう遠くない将来にフレグジット(フランス)やスウェグジット(スウェーデン)、ジャーグジット(ドイツ)、スペグジット(スペイン)などが相次いでもおかしくない。

【参考記事】イギリス離脱を止められるか、EU「譲歩」案の中身

 エディンバラ大学が3月10日に発表した研究では、フランス人の53パーセントがEU残留の是非に関して国民投票の実施を望んでいる。そしてスペインとドイツ、スウェーデンでも国民投票に賛成する意見が反対する意見を上回っていることが明らかになった。

フランス人はイギリスを追い出したい?

 EU懐疑派の極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首は、この研究結果を自身のブログで歓迎し、国民投票を求める国民の声には「非常に期待が持てる」と述べた。FNは、フランスでもEU加盟の是非を問う国民投票を実施することを望んでいる。

【参考記事】テロ後のフランスで最も危険な極右党首ルペン

 報告書によれば、ドイツとスペインで国民投票が行われた場合、「EU残留を強く希望する」結果になる可能性が高い。一方で、フランスとスウェーデンでは、EU残留を希望する回答が半数を下回ることがわかった。

 だが国民投票を求める声があるからといるからといって、大半がEUに懐疑的な意見を持っているとは限らないと釘を刺す。「国民投票を行なえば自分たちが敗れると考えるEU懐疑派は、国民投票の実施はリスクが高すぎると考えるかもしれない」と報告書には書かれている。「反対に、欧州懐疑派が成長しているような国々では、この問題について国全体で決着をつけるために、親EU派が国民投票を望むかもしれない」

 また今回の研究では、万が一イギリスがEUを離脱する場合に、同国が続けてEU単一市場へ参加を認められるべきか否かについて、欧州各国の意見が分かれていることもわかった。

 今回の調査の回答者のうち、イギリスが今後も単一市場の一部であるべきだと考えているフランス人はわずか4分の1しかいなかった。スウェーデン人の多くは態度を保留した。一方、ドイツ人のほぼ半数は、イギリスの継続的参加を支持している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済、「信じられないほど」力強い=JPモルガンC

ワールド

北朝鮮、圧倒的な軍事力構築を継続へ─金与正氏=KC

ビジネス

米ビザ、四半期利益が予想上回る 堅調な消費動向で 

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中