最新記事

原油

OPEC生産枠で合意できず、減産派サウジと増産派イランが対立

2016年6月3日(金)09時55分

6月2日、石油輸出国機構(OPEC)の総会で、生産枠をめぐる政策の変更を協議したものの、合意できなかった。写真はイランのザンギャネ石油相(2016年 ロイター/Heinz-Peter Bader)

 石油輸出国機構(OPEC)は2日に開いた総会で、生産枠をめぐる政策の変更を協議したものの、合意できなかった。市場への大量供給に難色を示すサウジアラビア側に対し、イランが大幅増産の権利を主張するという対立構造があらためて浮き彫りとなった。

 ただ新たに就任したサウジのファリハ・エネルギー相が融和姿勢を打ち出したこともあり、対立が激化する状況は避けられたという。会議ではバドリ事務局長の後任にナイジェリアのモハメド・バーキンド氏を任命することを全会一致で決定した。

 複数のOPEC関係筋が明らかにしたところによると、サウジなどの加盟国は、OPECの重要性の復活や市場シェア争いの終結などを目指し、OPEC全体の新たな生産枠の提案を試みたものの、全体での合意には至らなかった。

 イランのザンギャネ石油相は、新たな全体生産枠の設定を支持しないとした上で、各国の割当量について議論すべきだと主張。歴史的な生産水準に基づけば、イランはOPEC全体の生産量の14.5%を生産できるとした。

 OPECの現在の生産量は日量3250万バレルで、イランの割当量は同470万バレルとなる計算だが、これは市場の推定量である350万バレルやイランの推定量である380万バレルを大きく上回る。

 サウジのファリハ・エネルギー相は「われわれとしては非常に穏やかに対応し、いかなる状況でも市場を驚かせないよう心がける所存だ」と指摘。サウジは今後増産する可能性があるかとの質問には「サウジが今後、大量供給キャンペーンに乗り出すと考える理由はまったく存在しない」とし、大量供給は行わないと明言した。

 総会議長のカタールのモハンマド・ビン・サレハ・サダ・エネルギー相は、次回会合を9月にアルジェリアで開催されるエネルギー関連の国際会議にあわせて開くことで加盟国が合意したと明らかにした。

[ウィーン 2日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます
 

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中