最新記事

金融政策

フィンテック、日本の金融界は銀行法改正で出遅れを取り戻せるか

2016年4月2日(土)19時26分

 日本の3メガバンクも、フィンテック関連の投資に関心を示す。貸出の伸び悩みなど銀行としての収益機会が限られ、業績の明るい展望が描きにくいなか、フィンテックを介したビジネスチャンスに期待しているためだ。

 しかし、昔ながらのビジネスモデルが破壊("disrupt")される可能性にも、気付いている。

変革者

 日本のフィンテックへの取り組みは、2014年の仮想通貨取引所、マウントゴックスの破たんと資金喪失でイメージが傷ついたこともあり、出遅れたとの指摘がある。こうした中、海外に活路を求め、日本を離れたスタートアップ企業もある。

 ビットコインサービスを提供する「Zerobillbank」の共同創業者兼CEO(最高経営責任者)の堀口純一氏もその1人。同氏は、イスラエルの企業の先端技術を取り込めるなどと判断し、会社設立の地にテルアビブを選んだ。

 世界ではフィンテック関連企業への投資が盛んだ。堀内氏は、バークレイズ、グーグル、フェイスブックなど大手からの出資が、ごく一般的に行われていると指摘。新しい起業家を後押しするプログラムなども多くあり、環境が「全然違う」(同氏)という。

 こうした日本の状況も、今後変わるかもしれない。

 矢野経済研究所によると、今後フィンテック系のベンチャー企業の育成が盛んになり、フィンテックの市場規模(ベンチャー企業売上高ベース)は、2020年に567億円に成長すると予想する。2015年度(約33億円)に比べ17倍の成長が見込めることになる。

 金融庁も、仮想通貨を決済手段のひとつと位置づけ、電子的に移転できる「財産的価値」と定義し、資金決済法の改正案の成立を目指す。こうした法制度の整備は、ビジネスをする側からも、求められていることだ。

 仮想通貨ビットコインの取引所、ビットフライヤー(東京都港区)社長で、日本価値記録事業者協会(JADA)の代表理事をつとめる加納裕三氏も、こうした枠組みができることを歓迎。金融庁の迅速な対応を評価したうえで、「きっと非常にいい展開になる」と期待を示している。

 (トム・ウィルソン、翻訳編集:江本恵美)

[東京 1日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FOMCが焦点、0.25%利下げ見込みも反対票に注

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

ガザ交渉「正念場」、仲介国カタール首相 「停戦まだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中