最新記事

インタビュー

【再録】生前のカダフィは「国民に愛されている」と言っていた

2011年のアラブの春で殺害された「革命家」ことムアマル・カダフィは、94年の本誌単独インタビューで強烈な個性を見せた

2016年3月24日(木)18時30分

カストロと並ぶ「革命家」 1988年に米パンナム機爆破事件が起き、国連がリビアに制裁を科した。このインタビューが行われたのは制裁実施から2年後。当時カダフィはすでに30年以上もリビアの最高指導者の地位にあった。その後、2011年に「アラブの春」で体制が崩壊、カダフィは捕らえられ、リンチされて殺された(2008年撮影) Ahmed Jadallah (SYRIA)-REUTERS


ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画
1986年に創刊した「ニューズウィーク日本版」はこれまで、政治、経済から映画、アート、スポーツまで、さまざまな人物に話を聞いてきました。このたび創刊30周年の特別企画として、過去に掲載したインタビュー記事の中から厳選した8本を再録します(貴重な取材を勝ち取った記者の回顧録もいくつか掲載)。 ※記事中の肩書はすべて当時のもの。

※このインタビューを行った記者の回顧録はこちら:【再録】念願のカダフィ単独取材、私は砂漠の町へ飛んだ

[インタビューの初出:1994年4月6日号]

 今にいたるまで、30年以上も国の最高指導者であり続けている「革命家」といえば、キューバのフィデル・カストロとこの人、ムアマル・カダフィだ。

 88年の米パンナム機爆破事件の容疑者2人を引き渡さないリビアに、国連が制裁を科してから2年後、本誌デービッド・ケリーがカダフィ大佐のインタビューに成功した(記者の回顧録はこちら)。69年の無血クーデターで実権を握って以来、国を支配するカダフィは、制裁による物資不足などで社会不安が高まっていることを否定。だが99年には容疑者を引き渡し、03年に事件の犠牲者への補償金支払いを開始した。

◇ ◇ ◇

――ビル・クリントン米大統領は先ごろ、リビアはアメリカにとって特別な脅威だと発言しているが。

 クリントン自身の言葉とは思えない。周辺の誰かの作文だろう。私はクリントンという人間を信じている。彼は若い。ベトナム反戦デモを率いたこともある。平和を愛する善人だ。だからCIA(米中央情報局)には嫌われている。

 CIAはもっと邪悪な人物を大統領にしたいのだ。私は、クリントンがケネディのような運命をたどるのではないかと心配している。彼と彼の家族のために装甲車を贈ってやりたいくらいだ。

――指導者としての25年間に大きな誤りを犯したことは?

(86年、アメリカから)わが国が攻撃を受けたとき、徹底抗戦を貫けなかったのはまずかった。攻撃されたら、あくまで反撃を続けなければならない。

――リビアが支援してきた団体のなかで、支援すべきでなかったと思う団体はあるか。

 すべてのケースが完全に正しかったとは思わない。革命家と称して近づいてきた人物が、後にテロリストになったケースはある。

 たとえば、IRA(アイルランド共和軍)だ。わが国は彼らの活動をよく知らずに支援していた。北アイルランドの解放には賛成だが......IRAが軍人と民間人の区別なく無実の市民を殺しているのは問題だ。

 だが、われわれはアンゴラの解放運動を支持した。ジンバブエのロバート・ムガベ(大統領)も支持し、基地を提供してやった。彼らはテロリストではないだろう?

――しかし93年12月に、あなたはIRAの代表とパレスチナ過激派のアフメド・ジブリルやアブ・ニダルに招待状を出し、リビアで会談しようとした。

 会いたい人物には自由に会ってかまわないはずだ。

――だが、あなたがテロを支援しているという印象が強まった。

 それはアメリカの誤解だ。ジブリルやニダルはテロリストではない。彼らは聖戦を戦っている。

――リビアにニダルの基地はあるのか。

 いや、ニダルは基地などもっていない。彼が生きているのかどうかも不明だ。私が招待したのに来なかったからだ。しかし、ニダルがアメリカに何をしたのかね? 何もしていない。彼の土地を占領したイスラエルに対してさえ、彼は何もしなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去

ビジネス

「空飛ぶタクシー」の米ジョビ―、生産能力倍増へ 

ビジネス

ドイツ経済、26年は国内主導の回復に転換へ=IMK
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中